黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

ドラマ化された短期終了作品

 これまでも何度となく触れたが、今から三十八年前の本日11月20日に発売されたジャンプ84年51号で「DRAGONBALL」の連載が開始され、ジャンプの黄金期が始まった。そこで今回はその記念すべき号に掲載されていた短期終了作品を紹介したい

 

 ガクエン情報部H.I.P.(84年44号~85年22号)

 富沢順

 

 作者は車田正美のアシスタントを務めながら79年に「鋼鉄の殺人者」でフレッシュジャンプ賞入選を果たすと同年50号に掲載されてデビュー&本誌初登場を飾る。81年53号から富沢ジュン名義の「コマンダー0」で初連載。同作品が終了後84年44号から本作品の連載が開始されたのであった

 そんな本作品は、九州から東京の万仲高校に転校してきた泊桃太が、なし崩し的に入れられたH.I.P.の面々と共に様々なトラブルを解決する学園ギャグ漫画である

 H.I.P.とはHigh school Intelligence of Partyの略称で、依頼を受けたらいかなる問題も一週間以内に解決するというなんでも屋集団である。メンバーは桃太の他に高校1年生にして浪人と留年を繰り返して年齢が20歳を越えているリーダーの早乙女十三、かつてはシャーペンの遊子の異名で周囲から恐れられていた元スケ番の一之瀬遊子、柔道選手としても有名な巨漢の山下大器といった個性的な面々で、それらが依頼を請けたり巻き込まれたりで騒動を巻き起こすというのが本作品の基本的な流れだ

 以前に紹介した「うわさのBOY」や「とっても少年探検隊」もだが、こういった学校未公認のよくわからない組織の個性的なメンバーたちが騒動を巻き起こすコメディは80年代にはよくある作品である

 

shadowofjump.hatenablog.com

 

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 また、登場人物もこの手の作品はインパクト重視でやたら個性を強くする傾向にあるので、その中ではありきたりの部類に入るだろう。十三の20歳をとうに越えている設定なんて「ハイスクール!(3年)奇面組」の零たちの設定と被っているし(向こうはこちらよりは若いが)

 本作品はギャグマンガにしては絵が上手く、テンポも良くて嫌いな作品ではないが、厳しい言い方をすると同系統の作品との差別化がなされてなく、見るべき所は遊子が可愛い(個人の感想です)という所くらいだという印象だ。そして、本作品の連載が開始された時期は同系統の作品で「ハイスクール!奇面組」が既に人気を博しており、更に連載途中に「ついでにとんちんかん」が開始されるという状況では短期終了も止む無しで、むしろアニメ化されるほどヒットした両作品に挟まれての全29話は健闘したほうではないかとも思える



 ところで、漫画の中にはアニメやドラマ、映画などと映像化される作品が少なくない。そしてそういう作品は上にも挙げた両作品や、近々映画が公開される「SLAM DUNK」のように長期にわたって連載が続けられた人気作品であることが殆どだ

映画は未だに情報少なくて期待半分不安半分だが

 何故唐突にこんな事を言うのかというと、本作品は短期終了作品にも関わらずなんとTVドラマ化されたからである

 別に短期終了作品が映像化された例は、当ブログで紹介した短期終了作品の中でも「人形草子あやつり左近」がアニメ化されているなど無くはない。ただ、それは作画担当の小畑健が後に「ヒカルの碁」や「DEATH NOTE」などヒットを飛ばして人気作家となったからであるし、他の例としては最初からメディアミックスで漫画と映像作品をほぼ同時に展開したものの、思ったように人気が出ずにコケたなど相応の理由が窺えるものである

 だが、本作品の場合、ドラマ化されたのは87年と連載が終了して二年も経っているし、作者は後にスーパージャンプで連載した「企業戦士YAMAZAKI」がOVAなどに映像化されるなどの活躍をするものの、この時点では代表作は強いて挙げるなら本作品という状況で、ドラマ化される理由が全くわからないのだ

 一体なぜ本作品はドラマ化されたのだろうか?

 ポイントとなるのは、ドラマ化といっても月曜ドラマランド枠というところだろう。知らない人の為に説明すると、月曜ドラマランドというのはその名の通りフジテレビで月曜19時30分から放送していた90分の単発ドラマ枠で、映像は当時子供だった私から見ても低予算感溢れるチャチさ、出演者はアイドルやお笑い芸人など演技力より人気を優先したキャスティングである事から学芸会などと揶揄された低質な枠であり、ドラマ化のハードルが他と比べて低かった事が予想される

 また、上記のように出演者は演技力の無いアイドルが多い。因みに本作品の場合もその例に漏れず桃太役が(当時)ジャニーズ事務所中村繁之、そして遊子役はデビューしたばかりの森高千里という今となっては豪華とも言えるが演技力に関しては何とも言えないキャストとなっている。その為にシリアスな内容よりもコメディ、それも出演者の年齢に合わせた設定が求められるので、学園コメディの本作品はうってつけだっただろう

 他にも単にプロデューサーなどの関係者に本作品ファンがいたとか考えようと思えば幾らでも考えようがあるが、私は所詮関係者でも何でもない門外漢なので真相は知りようがない。だがどんな理由であれ、短期終了作品でありながらドラマ化されたという事実は快挙であるので是非ドラマも見て頂きたい

 …と言いたいところだが、なにせセルビデオや動画配信などは無く、昔録画したビデオでもない限り見る事が出来ないのが残念である、というか私も見ていないし。「17才」のカバーでブレイクする前の森高千里がどんなのか見たかったのに