黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

JSCレーベル最後の漫画単行本

 さて、今回紹介するのはタイトルの通りJSC、つまりジャンプスーパーコミックスの最後の漫画単行本である…のだが、最初に1つ、いや2つ断らなければいけない事がある

 まず1つは、JSCレーベル最後の漫画単行本ではあるがJSCレーベル最後の単行本ではないという事だ。と言うのも、本作品の後に「ソイヤ!こち亀お江戸だいすきBOOK」、NEXT!こち亀お江戸だいすきBOOK」という「こち亀」のキャラが江戸について色々紹介する漫画ではない書籍は出版されたからである

 そしてもう1つは、当ブログは主に黄金期ジャンプの短期終了作品について語るブログなのだが、今回紹介する作品は短期終了作品ではあるのだが黄金期の作品ではないという事だ。まあ、黄金期に限定するとネタが尽きるのも早くなるので、今回を機に黄金期以外や短期終了作品以外、果てはジャンプ以外の作品も少しづつ扱っていきたいと思う

 

 それを踏まえて今回紹介する作品はコレだ

 

 とっても少年探検隊(84年20号~27号)

 あろひろし

 

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あろひろしと言えばワニの自画像

 作者は80年に「スペーストラブルスペコマE-1」で第13回赤塚賞準入選受賞、81年2・3号に同作品が掲載されてデビュー。82年26号からは「おみそれ!トラぶりっ娘」で本誌初連載を飾るも35号であえなく終了。そして84年20号から連載が始まったのが本作品である

 

 さて、本作品の説明をする前にまずこれを見て頂きたい

 

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 御覧の通り、本作品は連載初回からして掲載順は16作品中13番目という非常に低くなっている。あの「キン肉マン」も連載初回は8番目だったり、初回が巻頭カラーではないという作品は稀にあるが、ここまで順番が後ろの方なのは稀な中でも稀である

 勿論これには理由がある。実は当時「ウイングマン」を連載していた桂正和が急病で倒れ、休載を余儀なくされた為に所謂代原として急遽連載が決まったのが本作品なのだ

 因みにどれくらい急遽だったかというと、初回の締め切りまでに三日しか猶予が無かったという事だ。まぁ、おそらく全く白紙の状態から三日というわけではなく、連載か読切で掲載される事は既に決まっていて準備段階だったのが急遽前倒しされたのだと思うが、どちらにしろ突然の依頼に作者はえらい慌てたであろう事は容易に想像出来る

 

 そんな本作品は、私立原野否(ぱらのいや)学園の未公認サークルである探検部の面々が、未確認生物や超自然現象の噂や情報を基に学園内を探検して騒動を巻き起こす学園コメディである

 以前「うわさのBOY」を紹介した際も触れたが、学校未公認の組織が騒動を巻き起こすコメディは80年代には割とよく見られた話である。そして本作品は他にも80年代テイストが盛り沢山だ

 まず、探検隊というテーマ。そう、この時代で探検隊と言えば川口浩探検隊である。知らない人の為に説明すると、当時テレビ朝日には水曜スペシャルという特番枠があり、その中で人気シリーズだったのが俳優の故川口浩が隊長を務め、未確認生物等を発見する為世界の秘境を探検する、という体のやらせ満載企画の川口浩探検隊だ。どれだけやらせ満載だったか知りたいのなら、当企画をネタにした嘉門達夫の「ゆけゆけ川口浩」という歌を調べてみるといいだろう

 物語の舞台である原野否学園が小学校から大学まであり、誰も全貌を知らない程のマンモス学園だというのもいかにもだ。この時代、第二次ベビーブームの影響で実際に学校のマンモス化が進んでいた事と、つくば市みたいな研究学園都市を合わせました、みたいな発想であろうが、生徒も一杯いるし土地も広大なのだから何があっても何が起きてもおかしくないという、コメディとして便利な設定だ

 他にもキャラ造形からオカルトにSFネタ、パロディネタと、どこを切っても80年代テイストが出て来る程隅から隅まで80年代テイストが満載である。…まあ、80年代の作品だから当然と言えば当然ではあるが

 

 そんな本作品だが、先に触れたとおり僅か8話で終了となってしまった。元々代原として急遽連載が決まったものでもあり、作者は連載終了後程なくして同年12月号から月刊ジャンプで「優&魅衣」の連載が始まっている事からも短期終了は既定路線だったのであろう

 とはいえ、仮に普通に連載が始まっていたとしても長く続いたかというとおそらくは否である。と言うのも、作品全体の雰囲気やネタのチョイスがマニアックすぎて一般層、特にジャンプのメイン読者層である低年齢層置いてけぼり感が半端ないのだ。正直なところ私も読んでいてキツいと思う事も少なからずあるので、是非読んで頂きたいなどと強くお勧めは出来ないのだが、むせかえるような80年代感は一読の価値はあると言える。一読して面白くないと思ったら無理に二読する必要はないかもしれないが

 本作品は翌85年にジャンプに連載された全話が収録された単行本が出版された…のだが、これがジャンプスーパーコミックス最後の漫画単行本という訳では無い。実は連載終了後、月刊ジャンプ増刊で不定期に掲載され、それがまとめられて続巻が発行されたのがなんと八年も後の93年で、こちらがジャンプスーパーコミックス最後の漫画単行本だ。あまりにも時間が空きすぎたから、というか2巻は出す予定が無かったからか、1巻には巻数表記が無いし、タイトルロゴも微妙に違うのが微笑ましい

 

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本作品は連載の経緯といい、なかなかに数奇な運命を辿った稀有な存在である