黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

短編集は高騰しているのか

 前回当ブログでは短期終了作品の単行本がプレミア化している事を私が買い集めた時の値段を絡めて述べたが、今回はもう1つ私が集めている短編集の状況について軽く触れてから1冊の短編集の紹介をしておこうと思う

 私が購入している範囲での話しか出来ないが、短編集の値段は一言でいうとかなりばらつきがあり相場があってないような印象だ。というのも、短編集は一部の人気作家のものを除くと短期終了作品と比べても出版部数が少ない反面、需要も少ない為に相場が形成される程に取引がされていないのが現状だと思う

 

 さておき、今回紹介するのはこちらの短編集だ

 

 ブラッディ・ソルジャー

 坂本眞一

 

 因みに私が本単行本を購入した価格はブックオフで110円だったが、メルカリの取引履歴を見ると700円から1000円弱くらいで取引されているようだ

 

 作者の経歴に関してはこちらを参照されたし

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 収録作品と初出は以下の通り

 

 ブラッディ・ソルジャー     92年オータムスペシャ

 ブラッディ・ソルジャーOMEGA   93年29号

 モートゥルコマンドーGUY       94年33号

 心の求道者              95年1号

 キース‼               91年スプリングスペシャ

 

 ここからは収録作品の紹介を

 

 ブラッディ・ソルジャー

 

 原作は榊竜哉。なお、原作者について調べたところ、実は「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の原作でおなじみ三条陸の別名義だという。内容は、三十年にもわたって小惑星連合ミレニアム軍と地球連邦軍の戦いが繰り広げられている惑星サドルを舞台に、数で圧倒的する連邦軍に対抗する為ミレニアム軍が開発したサイボーグ兵士ブラッディ・ソルジャーの中でもレイ・オルファ准尉をはじめとする4体の最新型が、それぞれの理由の為に戦場からの脱走を図るが…というSFミリタリーもの

 

 ブラッディ・ソルジャーOMEGA

 

 名前から察する通り上記の「ブラッディ・ソルジャー」と設定が共通している派生作品。原作は勿論「ブラッディ・ソルジャー」と同じく榊竜哉。内容は、ブラッディ・ソルジャーの中でも最強の能力を持ちながらも、精神面が弱い為に碌に戦う事が出来ないオメガことユウヤに業を煮やしたミレニアム軍の科学者でオメガの開発者であるビジャノ教授が、その能力を覚醒させる為に自分の娘でユウヤの世話役でもあるメアを利用しようとするが…

 

 モートゥルコマンドーGUY

 

 タイトルの通り「モートゥルコマンドーGUY」のオリジナルとなるミリタリーアクション漫画

 

 心の求道者

 

 サブタイトルが「史上最強の空手家アンディ・フグ物語」とある通り、空手家にしてK-1ファイターでもあるアンディ・フグの栄光と挫折、そしてそこから再び這い上がるまでを描いたもの

 

 キース‼

 

 宇宙歴1013年、統一宇宙プロレストーナメントで地球人初のチャンピオンとなったキースが、死の商人ヘインズに拉致されて金持ち相手の賭けプロレスでチャンピオンのバーバリアンとの戦いを強要されるというSFプロレス漫画

 

 以上の収録作品に共通しているのはバトル漫画、中でも原作付きの「ブラッディ・ソルジャー」を除くと全てが格闘技を主題にしている事で、これが作者の嗜好だという事は余白のおまけ漫画に前田日明率いるリングスを観戦に行ったエピソードを描いている事からも明らかである

 だが、好きなものを描いたからとてそれが傑作になるかどうかはまた別の問題だ。新人海賊杯を勝ち抜き連載権を獲得した「モートゥルコマンドーGUY」は短期終了してしまい、その後は青年漫画に活路を見出す事となる。対照的に作者の作品で話題になったのは登山家を主役とした「孤高の人」や、フランス革命期の死刑執行人を主役とした「イノサン」と格闘技が関係無い作品なのは皮肉な事である

高騰化する短期終了作品たち

 前回の記事の最後で触れたが、「コスモス・ストライカー」の単行本は現在結構なプレミアがついていて入手は困難な状況である

 

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 そして、プレミアがついている短期終了作品の単行本はこれだけではない。私は昔から短期終了作品が好きであったが、全ての短期終了作品が好きという訳でもないし、そもそも昔は欲しい単行本を全部買う財力も無かった。なので、本当に欲しかったもの以外はこのブログを始めてからヤフオクやメルカリ、マケプレなどで探して買うようになったのだが、一部の作品は「コスモス・ストライカー」同様にプレミアがついているし、時間が経つにつれて更に値が上がっていると肌で感じている

 そこで今回は短期終了作品のプレミア化についていろいろ思うところを語っていきたい

 

 まず、どんな作品がプレミア化しているのか、私が購入した時の値段で高かった順に3つほど挙げておこう

 

 第3位 ミスター♡ライオン

 

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 その値段は、正確な数字を出すのはいやらしいのですこしぼかすが送料込みで2000円を少しばかり超えるくらいである

 なんだ、プレミアという割には大した値段じゃないな、とお思いかもしれない。確かにそうも言えるが、よく考えてみて欲しい。元が400円もしない本が中古で5倍以上に上がっているのだから充分過ぎる程高いのだ。あなただってジャンプコミックス1冊にそれだけのお金を出したいと思うだろうか。新刊でも出したくないと思う人が殆どの筈だ

 

 続いて2位 コスモス・ストライカ

 値段は2冊セットが送料込みで4500円に少し届かないくらいで、1冊あたりの値段は僅かに「ミスター♡ライオン」を上回っている。しかもこの値段は状態が悪い品を購入した為で、状態がマシなら1000円くらいはアップしている。というか、他の出品物は皆ヤフオクのスタート価格が5000円を超えていたので、状態に目をつぶって購入を決めたのである

 

 そして第1位 アニマル拳士

 

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 値段はやはり送料込みで2500円を少し超えるくらいで、総額だと「コスモス・ストライカー」より安いが1冊あたりの価格では上回る。以上が割とどんぐりの背比べな感じもするがプレミアベスト3である

 ただしこれはあくまで私が購入した値段であり、「コスモス・ストライカー」で述べたように状態などで値段が上下するうえ、相場がキッチリ決まっている訳ではないので特にヤフオクやメルカリのような個人売買では値段に幅が出る事は断っておく。実際メルカリで「コスモス・ストライカー」の最近の取引履歴を調べたところ、高い値段では6000円を超えていた一方、最安ではなんと600円で我が目を疑った。私が探していた時はそんな値段で出品されている事など無かったのに…

 

 さておき、何故プレミア化が起きているのだろうか?

 まず言えるのは、短期終了作品の単行本だけじゃなく多くの商品に当て嵌まる事だが、転売が横行している為に需要が無駄に増えているという事である。最近では米不足のせいで米までが転売の対象になってしまったし、私のもう1つの趣味であるゲーム関連なんかは加えて外国人が買い漁っている為にプレミア化が一層激しく、元値が高い事もあるが中には十万どころか百万を超える商品もあるくらいだ

 

 では、その中でもなぜ上に挙げた作品が特にプレミア化しているのかというと、そこには2つの理由が考えられる

 まず1つは、通常のジャンプコミックスではなくジャンプスーパーコミックスだという事である。以前の記事で触れたがそもそもジャンプスーパーコミックスレーベルは売れる見込みの少ない作品の単行本を出版する為のレーベルであり、そうであるからには当然発行部数も流通数も少なくなる訳だ

 

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 そしてもう1つは、作者が漫画界で殆ど目立つ事無く消えてしまったという事である。ジャンプスーパーコミックスレーベルは売れる見込みが少ないというのはあくまで見込み、それも出版時点での話で、実際売れないのが殆どだが「カメレオンジェイル」は作者が後に「SLAMDUNK」で大ブレイクした為に重版を繰り返して100万部を超えたという話もあるし、「ああ一郎」なんかは一度絶版になったのに作者が「県立海高校野球部員山下たろーくん」でヒットを飛ばしたらカバーデザインを替えて復刊したりと後付けで注目されて売れる要素が出てくる場合もある

 一方上に挙げた3作品の作者を見てみると「コスモス・ストライカー」の戸舘新吾は同作品以外の連載作品は、やはり短期終了してしまった「クライシスダイバー」のみ、「ミスター♡ライオン」の大西志信は他にフレッシュジャンプ不定期で掲載されていた「ACEー001」くらい、「アニマル拳士」のやぎはし正一はフレッシュジャンプや増刊に読切が掲載されたのみで三者とも注目される事がないまま程なくジャンプどころかそれ以外でも作品を発表する事が無くなった為に後付けで売れる要素が皆無だったのだ

 つまり、元々出版当時に売れる見込みがなかったものが後付けで売れる要素もなかったので初版が少ないうえ碌に重版もされず絶版になった為、短期終了作品の中でも数が少なく希少性が増してしまったという訳である

 

 ところで、プレミア化した単行本は、その価値に見合うくらい面白いのだろうか?

 プレミア化した理由からもわかると思うが、ハッキリ言うとそんな価値は全く無い。私はジャンプの黄金期に連載された短期終了作品を揃えたいという目標があったので値段が高くても購入したが、そうじゃなければ購入していなかっただろうし、読んだ感想は作風が自分の好みではないというのもあるが購入して後悔とまでは言わないが、一度読んだらそれっきり殆ど読み返す事もないのに高い買い物だったなと思ってしまった

 だからとて、これらプレミア化した単行本は購入すべきでは無いなどと言うつもりはない。何に価値を見出すかは人それぞれであるし、作品に思い入れがあってどうしてももう一度読みたいなどと思っているなら止める道理も無い。プレミアと言っても今はまだ高々数千円なので、躊躇しているうちに更に値上がりしたら目も当てられないし

 ただ、勢いで購入してしまう前に、自分は本当にその値段で購入するほど必要としているのか、一度胸に手を当てて冷静に考えた方がいいと忠告しておく

これぞ宇宙サッカー

 今を遡る事二十年、2000年代のスペインサッカーリーグの強豪チームであるレアルマドリードは、ジネディーヌ・ジダンルイス・フィーゴロナウドなど世界的なスター選手を数多く擁し、その豪華な顔ぶれから銀河系軍団という異名をとっていた

 そしてそれより更に遡る事十余年、ジャンプにも銀河ではないが同じく宇宙を冠するサッカー漫画があったのを憶えているだろうか

 それが今回紹介するこちらの作品だ

 

 コスモス・ストライカー(88年1・2号~15号)

 戸舘新吾 田中誠

 

 

 作画担当の戸舘新吾については↓の記事を参照されたし

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 そして原作担当の田中誠一は、本人のサイトによると漫画家、ミュージシャン、イラストレーターを得て(※原文ママ。経ての間違いか)86年週刊少年ジャンプ漫画原作者として連載とあるが、86年のジャンプに該当する作品が見つからなかったのでおそらく本作品の年代を勘違いしているのではないだろうか。また、同サイトの仕事一覧によるとフレッシュジャンプ84年10月号、11月号に笠原倫が作画を務めるプロボクサー浜田剛史の伝記的漫画「鉄のKOBUSI」が掲載、これが原作者としては最初の仕事と思われる。その後86年増刊オータムスペシャルで出口敏孝が作画を務める「BORN FIGHTER」を、同年スーパージャンプ創刊号で野村繁裕が作画を務める「ギャンブラー」を掲載。その後、本作品で本誌初登場にして連載デビューを飾る事となる

 

 (当時からすると)近未来の1992年、サッカー人気は爆発的に高まり実に地球の総人口の半分がサッカーに熱狂していた。そんな中、ヨーロッパリーグに新規参入した超蹴球戦士(スーパーマニズム)サードエンバイアは30戦30勝という快進撃を続けているばかりでなく、反則を使う事無く相手を皆再起不能にするという超人揃いのチームであった

 サードエンバイアのトップであるフィクサーカリフの狙いはサッカーを利用した世界征服であったが、サードエンバイアの予言者クリスタルプライムは太陽と惑星たちが持つコスモスの光を宿す11人の戦士が野望を阻止すべく東のはずれ龍の島に集結すると予言した。その11人の戦士こそが主人公の逸刀志狼をはじめとする真蹴球戦士(リアルマニズム)コスモスであった。そして今、世界の未来を懸けたスーパーマニズム対リアルマニズムの戦いが始まる。というのが本作品のあらすじである

 ところで素朴な疑問なのだが、サードエン「バ」イアって何なんだ。明らかにドイツ第三帝国をモデルにしているからサードエン「パ」イアじゃないのか? それになんでイスラムの指導者であるカリフを名乗っているのか。フューラーなんじゃないの?

 さておき、そんな説明から察せられるかとも思うが、本作品を一言で表現するなら超人サッカー漫画だ。志狼が放つ必殺シュートのハイパーイカロスウイングは風圧で相手を吹き飛ばし、ボールが地面に突き刺さる程の威力であるし、デストバムはボールの中の空気を膨張させてボールを変形、しまいには破裂させる。…何の意味があるのかはわからないが。サードエンバイアの選手たちの技は更に凄まじく、ジェノサイドインパルスは相手とすれ違いざまに風圧を耳に集中させて三半規管に強力なダメージを与え、ブラッディーサンダークラッシュは強烈なジグザグパスを繰り返す事により、間にいる者は血肉を引き裂かれる。おかげでフィールド内は阿鼻叫喚の地獄絵図となっており、その作風故に一部の好事家からはサッカー版「アストロ球団」と形容されていたりする

 であるなら、本作品は連載当時読者に相当なインパクトを与えていただろうと思われるが実はそうでもない。以前「キララ」の記事でも同様の事を述べたが、サッカー漫画なのに超人バトルしているから異端だという本作品は、割と年上の読者なら奇異に映っただろうが、少年層の多くはちょっと変わっているけど超人バトル漫画にしてサッカー漫画なんだ程度にすんなり受け入れてしまうもので、実際私も戸舘新吾が作画を務めた作品なら本作品よりも「クライシスダイバー」の方が印象に残っている。…作風転換前の、という条件付きだが

 

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 そうなると本作品はただでさえ生き残り競争が厳しいジャンプの中でサッカー漫画として当時連載中だった「キャプテン翼」と比べられるだけじゃなく、超人バトル漫画として「DRAGONBALL」をはじめとする錚々たる面々とも比べられるという二正面作戦を強いられてしまい、それは作画原作共に初連載という本作品には荷が重く7話以降はほぼ巻末掲載という扱いの末13話にして連載終了となってしまった

 そんな本作品は、割と年上どころか年寄りになってしまった今となっては異端の漫画として神話を絡めた仰々しい設定や「魁‼男塾」的な技の説明などをネタ的に楽しめるのだが、単行本は電子書籍化されておらず、古本の値段はかなり高騰しているので気軽にお勧めできないのが現状である

ジャンプ黄金期の第10期を掘り下げる

 今回はジャンプ黄金期を連載作品の入れ替わりサイクル毎に掘り下げる記事の第10弾を

 

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 第10期は86年42号から52号までで連載作品は以下の通り。いつものように並びは連載開始順で連載回数も併記しておく

 

 

 こち亀          76年42号 1955話

 キン肉マン           79年22号 389話

 ハイスクール!奇面組   80年41号 339話(「三年奇面組」含む) 

 キャプテン翼          81年18号 356話

 北斗の拳         83年41号 245話

 銀牙 流れ星銀      83年50号 164話

 きまぐれオレンジ・ロード 84年15号 156話

 DRAGONBALL       84年51号 519話

 CITY HUNTER       85年13号 336話

 ついでにとんちんかん   85年14号 210話

 魁‼男塾           85年22号  313話

 聖闘士聖矢        86年1・2号 246話

 赤龍王          86年13号 50話(本誌掲載分のみ)

 空のキャンバス      86年33号 59話

 ハッスル拳法つよし    86年37号 10話

 くおん…         86年42号 11話

 山下たろ~        86年44号 178話

 キララ          86年47号 15話

 

 新連載は「サスケ忍伝」と入れ替わりで開始した「くおん…」と「県立海高校野球部員山下たろ~くん」(以下「山下たろ~」)、そして前期の変則的な入れ替えの影響で当期の半ばに終了した「ハッスル拳法つよし」と入れ替えで開始した「キララ」の3本。連載作品数は前期の「ターヘルアナ富子」同様に「ハッスル拳法つよし」は一応当期の連載作品とカウントした上で「ターヘルアナ富子」を前期終了分とみなして2減3増の18で二期連続の増加となる

 「くおん…」は川島博幸の本誌初登場作にして連載デビュー作だが、ラブコメ&ハートウォーミングストーリーという内容がジャンプとは合わずに当期中に終了。「山下たろ~」はこせきこうじによるジャンプの三本柱である「友情」、「努力」、「勝利」ならぬ「根性」、「努力」、「勝利」な泥くさい野球漫画で、10話で一度連載が中断するがすぐに連載が再開、地味ながらもジャンプ黄金期を支える作品となる。そして「キララ」は平松伸二お得意のバイオレンス要素がたっぷり詰まった野球漫画だが、まともに野球をする事が殆どないうちに短期終了、この作品が「ドーベルマン刑事」以来長年ジャンプを支えてきた平松伸二の最後のジャンプ連載作品となってしまう

 


 第10期を以て終了した作品は「ハッスル拳法つよし」と「くおん…」の2本。読切は小林義永が42号に「彼女が家に来た日」、43号に「家庭教師エイリアン」と2号続けて掲載。更に48号には桂正和が「KANA」を、49号には鳥山明が「ミスター・ホー」を掲載するが、作者が「DRAGONBALL」を連載中の「ミスター・ホー」は勿論の事、他の作品も連載化はされなかった

 短期終了作品は「ハッスル拳法つよし」、「くおん…」、「キララ」の3本で前期と数は変わらないが、連載作品数が増えた為に全連載作品における占有率は.167でダウン

 当期の主な出来事は42号から「きまぐれオレンジ・ロード」が休載に入り、結局当期中は一度も掲載される事は無かった。なので、当期の実質連載作品数は17とも言える。そして50号で「DRAGONBALL」が連載100回を、52号で「聖闘士聖矢」が連載50回を突破。他には「聖闘士聖矢」のTVアニメが当期中の10月11日から放送開始され、それを記念して45号の表紙を飾った。また、11月27日にファミコンソフト「ドラゴンボール神龍の謎」が発売、その攻略本である「ファミコン神拳奥義大全書 巻の三」も同日に発売されている

 連載作品の平均連載回数は308.39回で「こち亀」抜きだと211.53回。前期がそれぞれ316回と210.75回なので前者が微減、後者が微増。因みに前期で扱いに困った「ターヘルアナ富子」同様当期で扱いに困った「ハッスル拳法つよし」を抜いた場合、前期の「ターヘルアナ富子」抜きの数字が334.81回、223.8回に対して325.94回と224.13回となる

 黄金期の到来から二周年を迎えた第10期は、新連載作品は地味であったが誌外では「聖闘士聖矢」のTVアニメの影響でファン層をジャンプ読者である既存の少年層だけじゃなく女性層にまで拡げる事となり、「ドラゴンボール神龍の謎」はミリオンセラーを記録とジャンプの勢いを見せつける格好となった

 

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絆の短編集

 前回の当ブログの手塚・赤塚賞受賞作品集2の紹介記事で、収録作品のうち数作品については他の単行本にも収録されていると述べたが、今回紹介するのはその内の1冊だ

 

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 ポケットに聖書を

 浅美裕子

 


 因みに上の画像のように浅美裕子初期作品集3とあるのは以前紹介した「天より高く!」同様「WILDHALF」のヒット後に復刻したバージョンで、前のバージョンと比べるとカバーデザインが違ったりおまけ漫画が増えていたりするが、収録作品に差異がある訳ではないので欲しい方はどちらのバージョンを購入しても問題はないだろう。尚、古本は嫌だという人にとっては残念なお知らせだが、現状では電子書籍化はされていないようである。「天より高く!」の方は電子書籍化されているのに…

 

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 作者の経歴については↑の記事を参照に

 

 収録作品は以下の通りで掲載誌も併記しておく

 

 ポケットに聖書を   89年増刊スプリングスペシャ

 ジャンプ☆ラン    88年31号 

 SHONA         88年増刊オータムスペシャ

 グレートブルー    89年増刊ウインタースペシャ

 2001年夢中の旅  88年増刊ウインタースペシャル 

 

 ここからは各作品の説明を

 

 ポケットに聖書を

 

 表題作。同じ団地に住む小学生の田中千夢と小柳哲が、団地内で続発する失踪事件を調べていくうちに自分たちも巻き込まれていくというオカルトホラー&ジュブナイル漫画

 

 ジャンプ☆ラン

 

 手塚賞入選作。内容は前回の記事を参照に。余談ではあるが、余白に描かれたおまけ漫画によると作品を描くにあたって実際にスカイダイビングを体験したという。「天より高く!」を描くときも実際に乗馬を始めているし、作者は凝り性&アクティブな性格なようだ

 

 SHONA

 

 推薦入学が懸かった大会で結果を出せずに失敗し、走り高跳びを辞めてしまった女子高生の日高翔奈が、姉の元結婚相手である聖健介と再会してその生き方に触れているうちにもう一度走り高跳びと向き合ってみるようになる青春漫画

 

 グレートブルー

 

 過疎化の進む海沿いの村でたった2人きりの同級生だった慶太と千春。千春が引っ越して離れ離れになったが五年後、千春が戻ってきた事から再び動き出す小さな恋の物語

 

 2001年夢中の旅

 

 手塚賞準入選作にしてデビュー作。内容は↓の記事を参照に

 

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 以上、全5作品を読んでみると全体的に人間ドラマ、特に友情や愛情といった絆をテーマにした作品が多くなっている。これは後の代表作である「WILDHALF」にも通じるものであり、作者のお得意のテーマだと言えよう。ただ、気になる点としては5作品のうち実に3作品までが話を動かすのに主人公に癇癪を起こさせるという手法を使っていて、当時から高かった画力と比べると話作りの面ではまだまだという印象を受ける

 

 

 ついでにこちらも紹介しておこう

 

 荒鷲の伝説

 出口竜正

 作者については前回の記事を参考にされたし

 庵老竜正名義で描いた、前回紹介したものより2期前の手塚賞準入選作。内容は20世紀初頭のアメリカを舞台に、鳥のように羽ばたくタイプの飛行機で空を飛ぶ事を目指している青年ビル=ティラーが、失敗を繰り返し、時に挫けそうになりながらも諦めずに挑戦を続けるというもの

 因みにこれは電子書籍で購入したのだが実を言うと間違って、というか勘違いで購入してしまったものである。というのもてっきり商品は作者の短編集で、前回紹介した「倒魔の剣」も収録されているものと思い込み、今回の記事にちょうどいいと購入したのだが、いざ見てみたら収録されているのは表題作1本のみという内容で愕然としてしまった。もし同じように勘違いして購入しようと思っている方がいるなら気をつけるよう

手塚賞・赤塚賞を振り返る

 以前当ブログでは手塚賞入選作家のその後についての記事に関連して、手塚・赤塚賞受賞作品集1を紹介したが、せっかくなので他の巻も紹介しておきたい

 

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 という訳で今回紹介するのはこちらだ

 

 めざせ漫画家!手塚・赤塚賞受賞作品集2

 

 本単行本に収録されているのは88年上半期に開催された第35回手塚賞及び第28回赤塚賞受賞作品の計12本になる。因みにこの回は、手塚賞は史上初にして唯一の2人同時入選が出ているのに加え、赤塚賞は現在まで100回開催されて僅か6人しか出ていない入選者が出るという大豊作の回だったと言える

 

 1巻同様以下、収録作品と印象的な短評を

 

 手塚賞入選 楓パープル 成合雄彦

 

 作者は後の井上雄彦。本単行本以外にも「カメレオンジェイル」の1巻及びヤングジャンプコミックス版の復刻「カメレオンジェイル」にも収録されている

 

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 内容は「カメレオンジェイル」の紹介記事でも少し触れたが、「SLAMDUNK」の流川楓の原型と思われ名前も同じ流川楓が主人公のバスケット漫画で、後の作者の作品と比べると話も画力も発展途上ではあるが新人離れしたレベルの高い作品で短評も賛辞ばかりと、入選も納得の作品である

 短評(手塚治虫)絵のうまさが光っている。話もドラマチックにうまく作られている

 

 手塚賞入選 ジャンプ☆ラン 浅美裕子

 

 作者は前回「2001年夢中の旅」では準入選だったが今回は入選を果たした。本単行本以外にも短編集「ポケットに聖書を」にも収録されている

 

 内容は、憧れの先生がスカイダイビングのライセンスを取ろうと渡米した為にアメリカとスカイダイビングが嫌いになった高校生飛渡明生が、ひょんな事からスカイダイビング好きのアメリカ人クリスと知り合い、先生が夢中になったものを知りたいとスカイダイビングに挑戦する青春漫画。まとまってはいるが、正直「楓パープル」と比べたら一枚落ちる印象

 短評(本宮ひろ志)絵はバツグンにうまい。ドラマ性がもうひとつ弱かったが、将来がとても楽しみな人である

 

 手塚賞準入選 G(ジェネラル・エクシード)X 赤山寿文

 

 作者はジャンプでのデビューは叶わなかったが、後にあかやま壽文の名で漫画を描いたり小説の挿絵を担当したりしている。内容は特務部隊ジェネラル・エクシードのエージェントで甲賀忍者でもある里見速魚が、誘拐された少女を傷つけることなくその背中に取り付けられた軍事ユニットを排除するというミッションに挑むミリタリーもの

 短評(ちばてつや)鋭いタッチの絵はそれなりの魅力はあるが、人物が機械的なのが気になる。発想・アイデアも奇抜で面白いが、今ひとつ臨場感が欲しい

 

 手塚賞佳作 倒魔の剣 出口竜正

 

 作者は庵老竜正の名で87年上半期に「荒鷲の伝説」で手塚賞準入選と「治療博士」で赤塚賞佳作のダブル受賞を果たし、同年サマースペシャルに「荒鷲の伝説」が掲載されてデビューを飾る。その後増刊では本作品を含む幾つかの作品が掲載されるも本誌では連載も掲載も無かったが、マガジンSPECIAL「命~紅の守護神~」で連載デビューを飾る。また、01年には後にアニメ化された、というかアニメ化ありきで先行して月刊マガジンZで連載が開始された「アベノ橋魔法☆商店街」の作画担当も務めている。内容はアイヌ風の世界を舞台に、狩人の少年アラシが来魔(熊)に捧げる生贄に選ばれた幼馴染の舞依を救う為に来魔に闘いを挑むというもの

 短評(弓月光)わかりやすい話で、クライマックスもいい。すべてにソツがないが、それが欠点でもある

 

 手塚賞佳作 Country Sideーある田舎の出来事ー 岩丸

 

 作者は88年増刊オータムスペシャルに「宇宙人屋敷」が掲載されてデビューを飾る。翌年下半期の手塚賞でも「魔女の街」で佳作を受賞し、オータムスペシャルの「スクワイヤー」を経て92年33号に掲載された武田薫が原作を務める「金メダルウォーズ」の作画担当として本誌初登場を果たすが、これを最後にジャンプからは姿を消す。そしてその後MANGAオールマン97年12号から米山公啓が原作を務める「SAMU特別援助医療隊Dr.無限谷陽」の作画担当として連載デビューを飾る事に。内容は古き良き時代のアメリカの田舎町を舞台に、少年ジョディとクラスメイトのエアリー一家との交流を描いた海外ドラマ風の作品

 短評(高橋三千綱)いい話を作ろうとして、感動を与えることができない作品になった感じがする

 

 手塚賞佳作 CHANGE OF THE TIMES 石田正和

 

 作者については残念ながら調べても何もわからなかった。内容は、八年後にタイムスリップしてしまった高校生の柚木浩司がそこで未来の自分と出会い、自分にとっては未来の、未来の自分にとっては過去の運命を変える為に奮闘するタイムパラドックスもの

 短評(松本零士)デフォルメの研究が必要。ストーリーは、よくあるタイプだが、セリフが多くなってしまっているので、わかりにくくなっているのが残念

 

 手塚賞佳作 山小屋 おおうち賀津雄

 

 作者は月刊少年ジャンプ漫画大賞佳作を3度受賞している事以外はわからなかった。内容は、高校卒業前の思い出作りとして冬山登山を行っている最中に吹雪に襲われて山小屋に避難した矢崎達郎らの4人組と、先客である男性とのやりとりを描いた人間ドラマ

 短評(ちばてつや)それぞれの人物が克明に描写されていて、ドラマもありよい。もう少し人物や話を整理してもよいと思う

 

 

 赤塚賞入選 AT Lady! のむら剛

 

 作者は後に同タイトルで連載デビューし、岡野剛と名を変えて93年38号から連載が開始された真倉翔が原作を務める「地獄先生ぬ~べ~」の作画を担当する事に。本単行本以外にも「AT Lady!」の単行本1巻にも収録されている

 

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 内容はロボットによる犯罪に対抗する為に開発された婦警型ロボット刑事7体と、悪の科学者松戸狂授の開発したロボットたちとの闘いを描いた近未来ロボットギャグ漫画

 短評(糸井重里)骨太いものはないが、展開の”間”がよい

 

 赤塚賞準入選 ざます 赤峰亮介

 

 作者は本作品が88年増刊サマースペシャルに掲載されてデビュー。また、同名の人物がNHKのTV番組「プロフェッショナル仕事の流儀」のコミック版の作画担当者などを務めているが、タッチが違い過ぎて同一人物かどうかは不明。内容は、教育ママが息子を東大に合格させる為に無茶な勉強を強いるというブラックなお受験コメディ

 短評(永井豪)少しストレートすぎる。かき方が、笑いにつながらない。作者のパワーは感じる

 

 赤塚賞佳作 HIP-HOP JUNGLE 上北双子

 

 作者はその名の通り双子の姉妹で、元々笹川ひろし事務所のアニメーターとしてタツノコプロのアニメ制作に関わっていた。この次の回の赤塚賞では「RED・HOT」で準入選、同作品が89年増刊スプリングスペシャルに掲載されてデビュー。その後上北沢ふたごと名を変え「大人のないしょ話」スーパージャンプ94年14号から短期集中連載。更に上北ふたごと名を変えTVアニメのプリキュアシリーズの漫画版をなかよしで連載したり、TVアニメ「ヤッターマン」のリメイク版のキャラクターデザインを担当したりしたという。内容は夏休みに憧れのアフリカ旅行に出かけた砂伴奈虎子が、自称ターザンの孫であるテレンス・トレント・バービーに出会って振り回されたり、象に誘拐されたりするドタバタコメディ

 短評(楳図かずお)楽しいのだが、ややドラマにとぼしい。主人公をもっと工夫して、一貫した内容に

 

 赤塚賞佳作 私はてれびちゃん 松本拓也

 

 松本拓也で検索したら元プロ野球選手やらサッカー選手やら声優やら色々出てきたが、作者らしき人物の情報は見つからなかった。内容は、彼女に振られた男が試作品のモニターに選ばれてTV型ロボットと共同生活を送るというもの

 短評(糸井重里)ラストのオチでガッカリした。もっといろいろふくらむはず

 

 赤塚賞佳作 英雄になる時 十静馬

 

 作者はほぼ同時期に「双頭の蛇」でフレッシュジャンプ賞準入選、同作品がフレッシュジャンプ88年4月号に掲載されてデビュー。更に本作品が同年フレッシュジャンプ8月号に「ドラゴン荘冒険記」と同時掲載される。その後木崎ひろすけと名を変え月刊マンガボーイズ94年8月号から「GOD-GUN世郎」で連載デビューを果たす。他にもコミックビームや月刊少年エースで連載経験があるが01年に若くして心不全で死去。内容は茂吉、音吉、万吉の3人が世界中のお宝をかき集めるという私欲の為にロボットを制作し、邪魔者となる強盗団「よもぎ色の月」を排除しようというもの

 短評(鳥山明)絵は個性的でていねい、上手である。が、肝心のキャラクターに魅力がないのはおしい。人物のかき方に工夫を

 

 以上が88年上半期に開催された手塚賞及び赤塚賞の全受賞作品である。今後も折を見て手塚賞、赤塚賞の受賞作を振り返っていきたいと思うのだが、以前の記事で述べたように現状では単行本全20巻のうち半分程度しか所持しておらず、入手も難しいので全部振り返るのは厳しそうだ…

芸能は爆発か?

 今回紹介する作品はこちらだ

 

 スタア爆発(87年3・4号~22号)

 幡地英明

 

 作者は「LUCKY STRIKE」でフレッシュジャンプ賞佳作受賞、同作品がフレッシュジャンプ83年6月号に掲載されてデビュー。同年43号からやまさき十三原作の「あした天兵」で連載デビューを飾るも22話で短期終了しまう。その後86年増刊スプリングスペシャルに「月とサスペンス」の掲載を経て、翌87年3・4合併号から本作品の連載を開始したのであった

 

 そんな本作品は、世界的エンターテイナーに憧れるも現状はラーメン屋で働きながらたまにエキストラ出演するだけという主人公の今川杉作が、ひょんな事からスター女優である幸田エミリーの主演映画の相手役に抜擢され、公私ともに翻弄されながらスターへの階段を登っていくという芸能漫画である

 エミリーは元々これまで何度も共演し異性としても好意を抱いていた磯辺新太郎を相手役に「世紀末天使」という映画に出演する予定だったが、新太郎の方はエミリーの事をステップアップの為の踏み台としか見ておらず、好条件で他の映画会社から引き抜きをかけられているという。プライドを傷つけられたエミリーは新太郎を降板させ、相手役など誰でもいいと、ちょうどその時サインを貰いに楽屋に入ってきた杉作を代役として指名したのであった。というのが導入である

 

 さて、以前紹介した「プレゼント・フロムLEMON」の記事でも述べたが、芸能界を舞台にした作品の主人公は男性より女性の方が合っている。これはメイン読者層が少年男子で、作品の主人公も男性である率が圧倒的に高いジャンプでも例外ではなく、時代がかなり後の話になるが原作者が強制わいせつ罪で逮捕された事で連載が打ち切られたがそれまでは好評だった「アクタージュ」も主人公は女性であったし、ジャンプはジャンプでもヤングジャンプだが昨今話題を呼んだ「【推しの子】」も主人公自体は男であるが登場人物は女性ばかりである。中には男性が主人公でヒットした作品もあるが、そういう作品は逆に男性向けではなく女性向けだ

shadowofjump.hatenablog.com

 

 翻って本作品を見てみると、男性である杉作が主人公というだけでも問題だが、加えてこの杉作がキャラとして、役者として魅力を感じられないという更に大きな問題がある

 単行本2巻カバー折り返しの作者あいさつによると、本作品は1948年のハリウッド映画「イースターパレード」からヒントを得たという。私は同作品を見た事が無いので少し調べてみたところ、こちらでの杉作にあたるポジションは女性でエミリーのポジションが男性だったのを本作品では男女を入れ替えているようだ

 その歪みのせいか、はたまた作者が物語を重視してキャラ作りを軽視したからなのか、杉作は話の都合によって動かされ、その都度対応が男性的であったり女性的であったりとまるで操られるがままのロボットのよう…いや、作品的には台本通りに演じるしか能がない大根役者というべきか。おかげで私は杉作どころか話の中身も、あまつさえ本作品のタイトルすらすっかり忘れていた。そして今回の為に単行本を購入して読んでも全く思い出す事が出来ず、唯一記憶に残っていたのはタップシューズの代わりに靴底にスプーンをくくりつけてタップダンスを踊る場面しかなかった程だ

 そんな有様の本作品が人気出る訳もなく、1サイクルでの終了はなんとか回避出来たものの、2サイクル目になると殆どが巻末掲載となり19話にして終了してしまう。そして作者は以後読切の1つも掲載される事もなくジャンプから姿を消したのであった

 

 それにしても、本作品がこの惨状だったのに、終了から三カ月もしないうちに同じく男性主人公の芸能漫画である「プレゼント・フロムLEMON」の連載を開始させた編集部は一体何を考えていたのだろうか…