さて、今回紹介するのは「3年奇面組」及び、その主人公たちが高校に進学した事でタイトルを変更した「ハイスクール!奇面組」で人気を博した新沢基栄の単行本である
新沢基栄といえば以前「ボクはしたたか君」の紹介記事で触れたとおり、同作品の連載中に持病の腰痛が悪化して連載中断、その後再開される事なく終了となってジャンプから離れた訳であるが、ならば「ボクはしたたか君」の最終巻である第5巻が新沢基栄の最後のジャンプコミックスかというとそうではない
という訳で、今回紹介するのはこちらだ
古代さん家の恐竜くん
そう、本単行本は作者が腰痛で「ボクはしたたか君」の連載を中断、休養してる時期に発行された、それより以前にジャンプやその関連誌に掲載された読切作品を収録した短編集である
因みに表紙カバー折り返しの作者あいさつではこの時期の心境が綴られているが、ジャンプで延べ八年以上も連載したうえ、作品がアニメ化までされている作家が本単行本の出版でお金が入る事をありがたがる様は悲しすぎるので流石にネタだと思いたい
ただし、これが作者最後の単行本かというとそれも違う。あくまで通常のジャンプコミックスとしての最後であり、ジャンプを離れた後に少年ガンガンで連載された「フラッシュ奇面組」の単行本がエニックスから出ているし、こと集英社に限定しても、ジャンプコミックスはジャンプコミックスでもジャンプコミックスデラックスで「帰ってきたハイスクール!奇面組」、他にも新作ではないが「3年奇面組」や「ハイスクール!奇面組」の文庫版などが発売されていたりする
さておき、本単行本の収録作品と初出を
パートナー真児くん 90年40号
おやおや親父 88年18号
古代さん家の恐竜くん 87年増刊オータムスペシャル
DATTE!潮鐘 86年増刊スプリングスペシャル
Kの日記帳 85年フレッシュジャンプ2月号
解決豪くんマン 84年フレッシュジャンプ2月号
Mr.愛NG 83年13号
教師のらいせんす 82年1月10日増刊
ひまわり・ちゅーりっぷ 81年4月10日増刊
収録作品は当たり前といえば当たり前だが全てギャグ漫画である。といっても、「パートナー真児くん」は幼馴染同士、「Mr.愛NG」は転校生と不良生徒というどちらもベタな関係の男女によるラブコメ。「おやおや親父」は色々な家庭の色々なタイプの親父を、「古代さん家の恐竜くん」は家に連れてこられた恐竜と古代一家との生活を描いたファミリーコメディ。「DATTE!潮鐘」はやる気もなく部員も6人しかいない男子バレー部に新任コーチがやってくるというスポ根風。「Kの日記帳」は偏屈で皮肉屋なKという人物の視点で進む一風変わった学園もの。「怪傑豪くんマン」と「ひまわり・ちゅーりっぷ」は「3年奇面組」及び「ハイスクール!奇面組」の登場キャラによるスピンオフ。そして「教師のらいせんす」はこちらに登場したキャラが後に「ハイスクール!奇面組」に登場するという言わば逆スピンオフ作品とバラエティに富んだラインナップであるし、全部で9本も収録され、更に作者自身による作品解説までついているのだからボリュームの面も申し分ない
加えて、上の初出時期を見ればわかるが収録作品は「3年奇面組」の連載中から「ボクはしたたか君」の連載中断後に至るまでほぼ一年ごとに描かれているので作風やタッチの変遷を見て楽しむ事も出来るお勧めの短編集である。電子書籍化されているので現在でも容易に読む事が出来るし
唯一といえる不満点は、作者のジャンプ本誌での最後の読切作品である「必殺!学園救助隊キャラクター」が収録されていないところだが、同タイトルは本単行本が発売された後に描かれたものだから仕方がない