黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

小畑健 ジャンプに見参!

 ヒカルの碁DEATH NOTEバクマン

 いずれも黄金期終焉後のジャンプ連載作品ではあるがTVアニメ化されるなど人気の作品であるから、例え黄金期終焉後はジャンプを離れたという人でも全てを知らないという人はいないのではなかろうか

 今回はその3作品で作画を担当した小畑健のジャンプ初登場作を紹介したい

 

 魔神冒険譚ランプ・ランプ(91年52号~92年25号)

 小畑健 泉藤進

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魔神冒険譚と書いてアラビアンと読む

 

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 ちょっと待った。小畑健のジャンプ初登場作品はCYBORGじいちゃんGだろ、と言う人もいるかもしれない

 確かに小畑健は本作品以前に土方茂というペンネームでCYBORGじいちゃんGを連載しており、後に表紙を描き下ろして小畑健名義で出した復刻版や文庫版が出ているのでその事実を知っている人も結構いるだろう

 だが、CYBORGじいちゃんGはあくまで土方茂としてジャンプに掲載された作品であり、小畑健と言う名前がジャンプの誌面を飾ったのは本作品が最初であるのでこちらの方を採り上げさせて頂いた。CYBORGじいちゃんGが復刻したせいでこちらの方がマイナーだと思うし

 本作品から小畑健ペンネームを変更したのに加え、原作者を迎えて自らは作画に専念する事となった

 CYBORGじいちゃんGは細かい描き込みで一部の注目を集めはしたものの物語としては決して評価は高いとは言えず短期終了の憂き目にあっており、その画力を生かす為にはストーリーテリングを伸ばすよりもそこは原作者に任せた方がいいという判断なのだろう。後に幾つものヒット作を生んだ事からその判断は正しかったと言える

 そんな記念すべき小畑健としての、そして原作者を迎えての初めての作品である魔神冒険譚ランプ・ランプは、100年の封印から解き放たれた魔神のランプが一目惚れした女性を救う為に自らを封印したドグラマグラとその手下の魔神たちに戦いを挑むアラビア風冒険活劇である

 なんでアラビア風なのにドグラマグラなんだ?

 語感がアブラカタブラに似ているからアラビアっぽく思うかもしれないが、実際はミステリ三大奇書の1つに数えられる日本の推理小説でアラビアとはまったく関係がないのだが

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乳首は修正させていただきました

 他にもランプの親友の名前がハーメルンだったり、魔神たちの使う技の多くが英語名だったりどうも原作をつけた割には設定がブレている感じがする。そのせいか原作者の泉藤進は現在ネットで調べてみても情報は見つからず、どうやらこれ以外に作品は無いらしいという事がわかるのみだ

 

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 それはさておき、小畑健の画である

 当時から画力には定評があったものの今と比べればまだ発展途上であり、また、本作品がアラビア風の世界とあってキャラも建物も他作品とは雰囲気が違う。加えて小畑作品としては珍しいバトルもので、やたら凝っているバトルシーンのエフェクトも見どころだ

 だが、それが同時に本作品の欠点とも言える

 まずアラビア風の世界が日本人にはあまり馴染みのない設定であるのだが、それでもマギとかヒットする作品もあるからそれはいい

 一番の問題は作者はバトルを描くのが正直下手だという事だ

 エフェクトは凝っているし当然キャラもかなり描き込んである。しかし画に動きが見えずに迫力が感じられないのだ

 そりゃあ画なんだから動くわけがない、というのは至極まっとうな意見ではある。だが、上手いバトル漫画だとただのパンチ1つにしても力強く見え、キャラはこういう風に動いているのだろうなと頭の中で想像出来るものだ。しかし作者の描くバトルの画ではキャラの前後の動きと言うものが想像出来ず、マネキンにポーズをつけたみたいに見えてしまう。なのにエフェクトはやたら派手で地面がえぐれたりしているからその違和感たるや

 思えば作者のヒット作はヒカルの碁にしろDEATH NOTEにしろ頭脳や心理面のバトルはあるが、ジャンプの代名詞たるバトル漫画ではないというのはそういう事なのだろう

 そういうちぐはぐさのせいか結局本作品は23話で終了してしまう。心機一転名前を変え原作者を迎えての再出発なのにCYBORGじいちゃんGの31話より早く終了してしまった事に作者は何を思ったのだろうか

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チョコチョコ巻頭や2番手に配されるあたりに編集部の期待の高さが窺がえる

 そして小畑健がその名をとどろかせるようになるにはまだ何作か雌伏の時を過ごさねばならないのだが、それはまた別の機会に紹介したい