黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

短期終了作品ノスゝメ

 私が今更ながらに黄金期ジャンプの短期終了作品を紹介している理由は、これらの作品の中に私の好きなものが少なからずあるからだ。故にこれら短期終了作品が殆ど顧みられる事のない、顧みられたとしても打ち切り漫画などと笑いものにされるという現状には少なからず不満があり、そういう風潮を無くす為にも皆に読んで欲しいと思ったからである

 などと言うと「何で不人気で早々に終わらせられた昔の漫画なんかをわざわざ読まなくちゃいけないんだ」と思う人もいるだろう

 確かに当時のジャンプ誌上でアンケートの結果が良くなかったから早期に終了させられたのは動かしようのない事実だ。しかし、それはあくまで相対的な人気に過ぎない

 考えてもみて欲しい。黄金期ジャンプの発行部数はピーク時では650万部を超え、返品率は1割にも満たない。つまり少なく見積もっても読者数は600万人にもなるのだ。そのうちの20人に1人でも面白いと思う人がいるのならばファンの数は30万人である。それだけのファンを抱えている作品など現在どれだけあるだろうか

 例えば現在劇場版アニメの興行収入を毎年のように伸ばし、100億も見えてきたという程の人気を誇る名探偵コナンであるが、同作品を連載しているサンデーの発行部数は現在30万部にも満たない。つまりそのファン数は最大でも30万人に届かず、黄金期ジャンプの短期終了作品の方が人気が上なのだと言っても過言ではない

 …いや、過言なのは承知している。しかし、日本一の漫画雑誌であるジャンプの、それも黄金期に連載を勝ち取る事が出来ただけでもどれだけ凄い事か

 承知の方も多いと思うがジャンプでは編集者の目に留まったり賞を取ったり有名漫画家のアシスタントだというだけで新人がいきなり連載を開始出来るなどという事は基本的に無い。それでようやくジャンプ本誌や姉妹誌に読切を掲載する事が出来、好評を得て晴れて連載となる。黄金期ジャンプの二大看板と言える鳥山明井上雄彦もそうやって連載を掴んできたのだ

 そして私がここで採り上げる作品もまたそうやって二重の選別をくぐり抜けてきたのだから質は保証されている…筈だ

 また、当時はつまらないと評価していた読者たちも何十年も経った今となっては嗜好が変わっており、改めて読んでみると当時とは違った感想を抱く事もあり得る。実際私もこれを機に当時はあまりいい印象を持っていなかった作品も幾つか入手して読んでみたのだが、これが意外なほどに楽しく読む事が出来たのだ。だからこそ私は今になっての再読を勧めたいのである。まあ、中には再読してみたけどやっぱりダメだったという作品もあるけど、それはそれで懐かしさは感じられるので全くの無駄とはいえないだろう

 

 更に短期終了作品には長期にわたって連載が続いた人気作品と比べて明らかな利点が1つある

 それは全巻を揃えるのが容易である事だ

 そんな人も少ないとは思うが、例えばあなたが今になってSLAM DUNKが気になりだし、全巻を揃えようとしたとする。となると単行本を31冊も買わなければならない訳だ(新装版だと若干少ないが)。いい大人にとっては金銭的な負担など大したものではないかもしれないが、置くスペースには結構困る事になるだろう

 しかし、同じ作者が描いたカメレオンジェイルなら僅か2巻で完結し、金銭的にもスペース的にも負担は非常に少ない

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SLAM DUNKだと2巻まででは陵南との練習試合すら始まっていないぞ

 「そんなの関係あるか。俺はカメレオンなんたらじゃなくSLAM DUNKが読みたいんだ」という人もいるだろう。それは全く正しい。なにせSLAM DUNKといえばDRAGONBALLと並んで黄金期ジャンプの象徴といえる作品であり、これを読まずしてジャンプを語るなかれと言える程の作品であり、当然私も購入済みだ

 そういう人にはこう言おう。SLAM DUNKが気に入ったのなら作者の他の作品も読みたくないか?と

 そんな時にバガボンドを買おうというなら全部で37冊も買わなければいけない訳だ。いい大人にとっては金銭的な負担など大したものではないかもしれないが…以下略となる

 

 また、当初は好きで単行本を買い始めた作品が途中で作風が変わって楽しくなくなったり、或いはただ単に飽きたりして最終巻まで買い続けられなかったという経験はないだろうか? 私はある。しかし短期終了作品ならそんな心配は無い。なにせ僅か数巻で完結してしまうので飽きる暇もなく揃ってしまう

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こち亀を全巻揃えるのは色々な意味でハードルが高い

 

 他にも短期終了作品の、それも単行本ならではの魅力もある

 ジャンプの連載作品は大概奇数のページで始まり奇数のページで終わる事が多いので、必然的に話と話の間は1ページ空く事となる。本誌だとこの空きページには告知などが載せられ、単行本だとただの空白ページになったり、せいぜいラフなイラストが載せられたりする程度なのだが、短期終了作品の場合は単行本が出る頃には連載が終了して作者に時間的余裕がある為か、かなり凝ったイラストや設定画、作品の解説や近況報告などなかなかに読み応えのあるページとなっている事が多いのだ

 

 そんなに勧められたところで二十年以上も前の、しかも人気の無かった作品なんて今どき手に入れるのは難しいんじゃないかと思うかもしれない

 心配は無用である

 確かに多くの作品は既に絶版になって久しく新品を入手するのは非常に厳しいと言える。しかしヤフオクなりマケプレなりメルカリなりで私がこれまで紹介した作品や思いつく短期終了作品を検索して欲しい。一部にプレミアがついているものの、大抵の作品は比較的安価で出品されているのが見られる筈だ。先程も言ったが人気が無かったと言っても何せ黄金期ジャンプの連載作品であるから、そもそもの分母が桁違いである。単行本の出版部数は抑えたと言ってもそこらへんの雑誌で連載されている漫画よりもはるかに多く、当然中古市場に出回る数も多いのだ

 古本なんて汚くて嫌だという人には電子書籍をお勧めしたい

 わざわざ短期終了作品を電子書籍で購入したいなんて人はあまりいないから気付いてない人も多いだろうが、ストアには全てとは言わずとも結構な数の短期終了作品が電子書籍化されて並んでいたりする。その中には古本ではプレミアがついているような作品もあり、当然定価で品切れの心配もなくいつでも購入する事が出来るのだ

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私の電子書籍ライブラリ やるっきゃ騎士は見なかった事にして頂きたい

 加えてちょくちょくセールが行われており、短期終了作品に限らず色々な作品が半額以下、時には100円未満で売られる事もあるので、電子書籍に抵抗のある人もいるだろうが一度試して欲しい。たとえ合わなくても出費は微々たるものだし置くスペースに困る事もないし

 

 願わくば短期終了作品に興味を持つ人が少しでも増えるように…