黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

黄金期ジャンプで最も多くの作品を連載した男

 黄金期ジャンプにおける最長連載記録を持つ作家は「こち亀」こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」を連載していた秋本治だという事は前回当ブログでも触れたし、別に当ブログで触れなくとも周知の事実であろう

 では、黄金期ジャンプにおいて最も多くの連載作品を描いた作家は誰だろうか?

 

 答えは2人いて、1人は当ブログでも何度か取り上げた桂正和、そしてもう1人は「よろしくメカドック」でお馴染みの次原隆二で、連載作品数は6つになる

 因みに黄金期以外も含めると両者とも連載作品数は7つに増えるが、これが最多という訳ではなく、小畑健は土方茂名義も含めると10、本宮ひろ志に至っては11にもなって上には上がいるものである

 さておき、今回から黄金期ジャンプ最多連載作品記録を持つ次原隆二が描いた作品のうち短期終了作品を3回にわたって紹介しておこうと思う。その数は実に5つ、つまり「よろしくメカドック」以外の作品は全て短期終了作品となっており、こちらも黄金期ジャンプ最多記録となっている

 と、早速作品紹介に入る前に例によって作者の経歴を

 次原隆二は79年に「翔べ雷音図」で手塚賞佳作受賞、翌80年34号から河西和久原案の「暴走ハンター」で連載デビューを果たす。因みに原案を務めた河西和久は何者なのか調べてみたところ、当時16歳で後にカメラマンになったという事しかわからなかった。そして82年フレッシュジャンプ8月号と10月号に「よろしくメカドック」を掲載するとそれが連載化されて同年44号から開始、後にアニメ化も果たし作者の代表作となる。同作品は中断を挟んで85年13号まで続き、これが作者の黄金期ジャンプ初の連載作品でもあった

 そしてまず紹介するのは「よろしくメカドック」の連載終了後、増刊サマースペシャルに連載された後に連載化されたこちらの作品だ

 

 ロードランナー(85年41号~86年12号)

画像は電子書籍版です

 前作の「よろしくメカドック」はカーチューンショップであるメカドックのスタッフ風見潤を主人公に序盤は業務中心のお仕事漫画だったのが、後にチューンした車に自ら乗り込みレースに参加するようになって人気を博した訳だが、本作品はバイク便ドライバーの速水烈を主人公に序盤はお仕事漫画、後にレースに参加するようになるという、「よろしくメカドック」が四輪なら今度は二輪だと言わんばかりの内容となっている

 しかし、「よろしくメカドック」の人気の要因は作中に登場する見た目にも格好よく個性的な車の数々によるものが大きかったと思うのだが、バイクは車に比べると機種ごとの見た目にあまり差異はないから画的にあまり映えないし、人気も漫画作品含めて車の方が様々な点で上である。勿論バイク漫画の人気作品もある訳だが、そういう作品を見てみると大概は走り屋だったり暴走族だったりと本作品とは方向性が違うし、そもそもバイク漫画を好む読者層もジャンプのそれより年齢が高めだったりするので人気が出る訳もない。アニメ化した「よろしくメカドック」の次の作品という事で多少猶予が与えられたのか、なんとか1サイクルでの連載終了は免れたものの、2サイクル目に入るとほぼ巻末、たまにブービーという酷い扱いで22話にして終了してしまった

 

 そして「ロードランナー」の終了後、87年25号に読切作品の「SUPER PATROL」を掲載、それが連載化してタイトルを変更した上で同年32号から開始されたのがこちらの作品だ

 

 特別交通機動隊SUPER PATROL(87年32号~46号)

 

 本作品は、過激化する交通犯罪に対抗する為に結成された特別交通機動隊スーパーパトロール(タイトルではない)の隊員で、パトカー乗りの水城武尊と白バイ乗りの伊達勝が、互いの乗り物こそ最高だと反目しながらも事件を解決する警察漫画である

 まさか二輪が駄目なら四輪と二輪のチャンポンならどうだ、と安易に考えたのではないかと勘繰ってしまうが、内容としてはダブル主人公ではあるもののビジュアルからして明らかに武尊の方が優遇されており、比重が車の方に寄っているのはいいとして、問題なのは交通機動隊としてしまった為に結局のところやる事は基本カーチェイスでバリエーションが少なく、その内容は「よろしくメカドック」や「ロードランナー」の序盤と変わりばえしない印象を受ける

 一応違いとしては前の2作品が後にレースに参加するところを本作品は2人の腕を見込んで警察を辞めてレースに参加するよう誘いを受けるが、警察官である事を貫いて断るという点がある。…のだが、それは「ロードランナー」を下回る15話で連載終了と相成ってしまって描くページが無く結果的にそうなっただけで、連載が続いていれば変な理屈をつけてレースに参加するようになっていたのではないだろうか。ジャンプ漫画は隙あれば勝負とか大会とかさせようとするし

 そして、この失敗をもって作者は「よろしくメカドック」の流れを汲む自動車、バイク路線に見切りをつけたのであった