黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

知られざるルーツ

 あまり注目されていないが本日9月28日は「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」(以下「ダイの大冒険」)を原作としたゲームソフトの「インフィニティストラッシュ ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の発売日である

 説明の必要もないとは思うが「ダイの大冒険」はゲームソフトの「ドラゴンクエスト」を基にした漫画で、監修にゲームを制作した堀井雄二、原作に三条陸、作画に稲田浩司という布陣で89年25号及び26号に前身となる「デルパ!イルイル!」、35号から37号にかけての「ダイ爆発‼!」の掲載を経て45号から連載が開始された作品であり、単行本の発行部数は5000万部を超える黄金期ジャンプを代表する作品の1つと言えよう

 普通これだけの人気作となると当たり前のようにゲーム化するものだが、別に元となった「ドラゴンクエスト」でいいじゃないという判断なのか「ダイの大冒険」はこれまで三十年もの間ゲーム化の機会に恵まれていなかった

ドラクエ自体はスピンオフ作品も一杯出ているのに

 それが、2020年の再アニメ化を契機にゲーム化の機運が高まり同年のうちにアーケードカードゲームの「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 クロスブレイド」が稼働開始、翌21年にはソシャゲの「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 魂の絆」がサービス開始(既にサービス終了しているが…)、そして本日ついに「ドラゴンクエスト」のホームと言える家庭用ゲームに逆上陸する運びとなったのである

 …と、ここで1つ告白しなければならない事がある。わざわざ話題にしているにもかかわらず実は私はゲームを購入していなかったりするのだ

 一応言い訳をさせて貰うと、購入を見送った理由としては、第1に発表時期からして明らかにアニメに合わせて発売しようという意図が見え見えだったのにアニメ放送終了から一年近くも経っての発売は開発に少なからず問題があったのが予想できる事、第2にとっくに原作は完結しているのにゲームでは鬼岩城の戦いまでしかやらない上、操作できるキャラはマァムとヒュンケルのバージョン違いを入れても6キャラのみで、クロコダインどころかアバン先生すら操作出来ない事(事前情報に無いだけで操作できる可能性もあるが)。そして第3は、あまりこういう事を言いたくないのだが、ゲームの発売元であるスクエニことスクウェア・エニックスが最近発売した作品の外れ率がかなり高い事と、不安な要素が多いからである。そんな私の不安を良い意味で裏切ってくれる事を願ってはいるのだが…

 と、いきなりネガティブな話題をふっておいてなんだが、今回はその「インフィニティストラトス ドラゴンクエスト ダイの大冒険」及びその原作である「ダイの大冒険」のルーツとなるこちらの作品集を紹介したい

 

 平成20面相

 佐藤薫

 

 上の画像を見て、これのどこに「ダイの大冒険」のルーツがあるんだ? 大体佐藤薫って誰だよ? 絵柄からし稲田浩司の別名でもないだろうし見た事も聞いた事も無いぞ。と、お思いの方も多いと思われる

 それもその筈、佐藤薫はジャンプに連載どころか読切作品が増刊に幾つか掲載されただけで、私も本単行本の事を偶然知ったが、それ以上の事をネットで調べようとしても同姓同名の別人と思われる人物しかヒットせず情報は皆無だったのだから

 じゃあなんでそんなものを紹介するのかというと、理由は下の画像を見て頂ければわかるだろう

少し字が潰れているが

 そう、収録作の1つに「ダイの大冒険」の原作担当である三条陸が原作を務めた作品があるからで、ぶっちゃけ佐藤薫自身は無関係なのだ

 という訳で佐藤薫の経歴はわからなかったので置いといて三条陸の経歴を

 三条陸は元々「ホビージャパン」などでライターをしていた所、86年にOVAの「装鬼兵M.D.ガイスト」の脚本を担当する事になり、翌87年にはコミックボンボンの「スカイボンバー一直線」で漫画原作者としてのデビューを飾る

 また、「月刊OUT」のライター陣に三条陸と共に堀井雄二も名を連ねていた事から親交を持つようになって、ジャンプとも関係が繋がり89年5・6号から始まる「ファミコン怪盗芸魔団」にライターとして参加するようになって、それが「ダイの大冒険」の原作を任される遠因となる。…のだがそれは後の話で、今回紹介する「最強(ストロンゲスト)」はそれより少し前の89年増刊サマースペシャルに掲載された作品だ

 そんな本作品は、後にヨネクラボクシングジムを設立し何人もの世界チャンピオンを輩出した人物である米倉健司の若き日を、指導者であるアルビン・R・カーンとの関係を中心に描いたボクシング漫画である

 余談だが、現在ジムは閉鎖され本人も今年の4月20日に亡くなっているのだが、教え子の1人であり元世界チャンピオン(ミニマム級)の大橋秀行が設立した大橋ボクシングジムもまた何人もの世界チャンピオンを輩出しており、現在全階級を通じて世界最強との声もある井上尚弥も所属していたりする

 さておき、本作品は実在の人物をモデルにしたノンフィクション漫画、しかもテーマがボクシングで試合のシーンもバトルとしては地味なので、バリバリのフィクションでバトルシーンも派手な「ダイの大冒険」を彷彿させる部分は正直見つからない。そもそも作画担当者が違うので見た目の印象すら違うし。だが、強いて挙げるなら本作品は米倉健司、「ダイの大冒険」は「ドラゴンクエスト」という有りものの素材を漫画に落とし込むという部分は共通しているので、その点については本作品の経験が「ダイの大冒険」の礎となったと言っても過言ではないかもしれない

 とは言え、本単行本は結構入手難易度が高いので、読切1本の為に入手するべきかというと、余程「ダイの大冒険」か三条陸に思い入れが無ければお勧めできないというのが本音である

 最後に三条陸が関わっていない作品の解説も軽くしておいて今回は終了とさせていただく

 

 平成20面相 90年増刊オータムスペシャル掲載

 

 単行本の表題作で、怪人二十面相の孫であり平成20面相を名乗る二階堂美憂が、盗みを阻止しようとする明智小五郎の子孫らと戦いを繰り広げる怪盗漫画

 

 THUNDER BOY 86年増刊オータムスペシャル掲載

 

 デビュー前の新人レスラーである堀田純がマスクで正体を隠して勝てば100万ドル負ければレスラー引退という大勝負に挑むプロレス漫画

 

 バトルマシン・ソクヤ 85年オータムスペシャル掲載

 

 中風博士が開発した人格入力システムで、ロボットに接続する事で完璧なロボット兵を量産する事が出来るレプリカ・システムを巡って戦いが繰り広げられるロボット漫画