黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

メディア展開に恵まれないあの作品

 いきなりであるがこちらを見て頂きたい

 

 1位 こちら葛飾区亀有公園前派出所

 2位 ジョジョの奇妙な冒険

 3位 DRAGONBALL

 3位 ?

 5位 キャプテン翼

 5位 ドラゴンクエスト ダイの大冒険

 

 これはジャンプ黄金期の連載作品の単行本発行巻数ランキングベスト5なのだが、「DRAGONBALL」と同数の3位タイにランクインした作品が何なのかわかるだろうか?

 

 正解は森田まさのりの「ろくでなしBLUES」である

画像はスピンオフ作品の「ろくでなしぶるーちゅ」

 当時の読者なら言われてみればランク入りも納得できる作品と思うが、その反面、他のランク入り作品と比べると若干地味な印象を受ける方もいるかもしれない。それも故無き事ではない話で、他のランク入り作品と比べると他媒体へのメディア展開が少ない為にジャンプ以外では目にする機会があまりないのだ。一応TVドラマ化はしたけど放送時間がド深夜の上、そもそも連載終了後十年以上経ってからだったので殆ど話題にならなかったし

 中でも特に致命的なのが他のランク入り作品がTVアニメ化され、それも結構な長期にわたって放送していたのに対して「ろくでなしBLUES」だけがTVアニメ化されていない所だ(劇場版アニメにはなっているが)。因みにこれ以下のランキングを見てもTVアニメ化されていない作品は17位タイで単行本数は「ろくでなしBLUES」の全42巻に対して半分の21巻しかない「県立海高校野球部員山下たろーくん」までなかったりするのだから不遇である

 当ブログで何度も繰り返してきたが、ジャンプはアンケート至上主義を徹底しており、連載を続けるには読者アンケートで良い結果を出し続けなくてはならない。逆に言えば、長く連載が続いた「ろくでなしBLUES」はかなりの人気作品である筈なのに何故TVアニメ化されなかったのだろうか?

 端的に言えば、当時はアニメは子供が見るものだという風潮があり、ヤンキー漫画を好む層はアニメに興味が無かったという事だろう。その為この時代の代表的なヤンキー漫画である「BE-BOP-HIGHSCHOOL」もTVアニメ化されなかった(OVA化はされているが)し、ジャンプの二大ヤンキー漫画の片割れである「BØY」はTVアニメ化されたが、それは95年に「新世紀エヴァンゲリオン」が放送されて以降、アニメは子供の為のものという風潮が変わりつつあった97年になってからの話で、その頃には「ろくでなしBLUES」は連載終了していたのであった。もしもう少し連載が続いていたなら当然TVアニメ化されてもっとメジャーになっていただろうに。そういう意味では惜しい作品だと言える。…いや、まあ、充分すぎる程メジャーではあるのだが

 そしてもう1つ、かつては子供の為のものという風潮があったものがある。それはTVゲームで、こちらもやはりヤンキー漫画との相性は良くなく「BE-BOP-HIGHSCHOOL」のゲーム化は1回、「BØY」に至ってはゼロ、そして「ろくでなしBLUES」はそれらよりは多いものの、僅か2回という有様だ

ファミコンジャンプⅡにはプレイヤーキャラとして登場しているのだが

 そういえば、かつて当ブログで紹介した記事において「まじかる☆タルるートくん」のゲーム化回数が多くて謎だと述べたが、もしかしたら作品のターゲットが低年齢層であった事と、ゲームは子供の為のものという当時の風潮がマッチした為なのかもしれない

 

shadowofjump.hatenablog.com

 

 と、前置きが長くなってしまったが、今回紹介するのは2回しかゲーム化されなかった「ろくでなしBLUES」のゲームのうち最初に発売されたファミコン用ソフトのこちらだ

 

 ろくでなしBLUES

 93年10月29日発売

 本ソフトの特徴をマニュアルから抜粋すると

 このゲームは「ろくでなしBLUES」の登場人物となって、いろいろな事件を解決していく、アドベンチャーR.P.G.です

 このゲームはプレイヤーがキャラクターを選んでプレイすることができるマルチキャラクターシステムを導入しています

 との事で、選べるキャラは原作の主人公である前田太尊の他、七瀬千秋、中田小兵二、写真部の中島の4人となっている。とはいえ、太尊以外のキャラでのプレイはおまけのようなもので基本的には太尊でのプレイがメインとなる。と言うかそもそも最初は太尊でしかプレイ出来ないし

 ゲームの基本的な流れとしては、街のマップで行先を選択し、その先ではキャラを操作して歩き回って勝嗣や米示など原作でお馴染みのキャラと話して情報を得て、時には喧嘩バトルをして原作に沿ったストーリーを進めていく事になる

左が街のマップ 右が選んだ先(学校)のマップ

 喧嘩バトルはコマンド方式で、通常のRPGで「たたかう」に該当する「やるしかねぇ!」を選択すると更に「なめんなよ コラ!」「ぶっ殺す!」など物騒で意味不明なコマンドが並ぶが、これは戦法の名前であり、例えば「タコにしたろうか?」だとジャブ→ジャブ→ストレート→ボディブローというふうにそれぞれ4回の行動を1セットとして登録された戦法の中から選んで攻撃して相手の体力を無くせば勝ちになる

 尚、この戦法はいつでも変更可能で、威力は小さいが命中力の高い行動で固めて確実にダメージを重ねるようにしたり、命中率は低いが威力が大きい行動で固めて一気に大ダメージを狙ったりと自分好みのカスタマイズが出来る

フェイントは絶対避けられるが次の攻撃の威力が増す

 本ソフトの良い所の1つは、発売された時期が93年と、スーパーファミコンどころか翌年にはプレイステーションが出ようという年であったので、ファミコンソフトとしてはグラフィックが奇麗であるという所だ。特にバトル画面は4回の行動すべてに攻撃グラフィックと相手のリアクショングラフィックが表示されるという漫画的演出になっていてなかなか凝っている。とは言え、あくまでファミコンレベルでの話であるが

 また、この手のゲームだと続きをプレイするのに時間があいてしまうと何をするところだったかわからなくなって行き詰るケースがままあるが、それを防ぐ為にロード画面に何をするところだったのか書いてあるのもユーザーフレンドリーで良い

なので、普通に詰まった時も一旦セーブして再開すると良い

 一方、欠点もある。本ソフトはバトルで減った体力を回復するのにお金が必要なのだが(節目では自動的に回復する時もあるが)、バトルで勝利してもお金は入手出来ないのだ。ではどうやってお金を入手するのかというと、マップ上のあちこちを調べてお金を見つける必要があるのだが、入手出来るかはランダムな上に確率もあまり高くないので行く先々で調べまくるという煩わしい作業を強いられてしまう

結構な時間がこの作業に割かれる

 そして最大の欠点は、ボリュームが少なすぎるところだろう。この記事を書くにあたって本ソフトのメインシナリオである太尊編をクリアしたのだが、そのプレイ時間はちゃんと図った訳ではないが長めに見積もっても十時間掛からないくらいだったし、他のキャラ編に至ってはおまけレベルで本当にすぐ終わってしまう。また、シナリオ的には薬師寺と戦ったところでエンディングとなってしまい、四天王最後の1人である葛西が登場しないのも今プレイすると不満が残る。まあ、これは発売当時の原作の進行具合から仕方ない事ではあるのだが

 そんな欠点もあるが、本ソフトは原作の雰囲気が堪能できるし、キャラゲーにしては出来が良いほうなので原作が好きならプレイして頂きたい。現物は昨今レトロゲームが高騰気味な上にファミコン末期の発売であまり出回らなかった事もあってか入手困難だが、比較的容易に入手出来るファミコンジャンプミニに収録されているので興味がある方にはこちらのほうをお勧めする