黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

仕組まれたブームが産んだ徒花

 先月は丸々「キャプテン翼Ⅱ」の紹介及び攻略記事に費やされたが、その紹介記事中で「キャプテン翼ワールドユース編」(以下「ワールドユース編」)について触れ、その問題についても述べた

 だが、記事では触れなかったが「ワールドユース編」には根本的にもっと大きな問題、というか疑義があったりする

 

 それは、そもそもなぜジャンプで連載されたかという事だ

 

 別にジャンプで連載するのにふさわしくないなどと作品や作者を貶すつもりはない。ただ、ジャンプにおいて一度終了した作品の続編が他誌で連載される事は珍しくないが本誌で連載される例は極めて少ない、というか、黄金期では他にないし、黄金期以外でもパッと思いつかないくらいには稀なのに、なぜ「キャプテン翼」だけが本誌で続編を連載出来たのだろうか

 それは、当時の日本でにわかにサッカーブームが巻き起こっていたからである

 「ワールドユース編」の連載が開始される前年の93年の5月にはプロサッカーリーグのJリーグが開始されただけじゃなく、10月にはW杯アメリカ大会出場が懸かったアジア最終予選の最終戦、所謂ドーハの悲劇よってサッカーに対する注目度が爆増、Jリーグの試合が頻繁にゴールデンタイムで放送されていた他、サッカーに全然関係ない雑誌やCMにJリーガーをバンバン起用するなどメディアがこぞってサッカーを採り上げていたのだ

 いや、これは順番が逆かもしれない。メディアがプッシュするのは既定路線で、そこにたまたまドーハの悲劇というドラマ性が乗っかった事で予想以上にブームが過熱したというのが真相ではないだろうか。その証拠に1つ前のW杯イタリア大会のアジア予選は静かなものだったのにアメリカ大会になって急に騒ぎ出したし、ドーハの悲劇の前には既に「ワールドユース編」に先駆けて「キャプテン翼ワールドユース特別編最強の敵!オランダユース」が短期連載されていた事からもメディアはブームに乗っかるのではなくブームを創出する事を企図し、集英社及びジャンプもその一翼を担っていたと考えた方が自然だろう

 そしてジャンプは「ワールドユース編」の連載が開始されてから僅か三カ月後という時期にもう1つ、サッカー漫画の連載を開始させていたりする

 それが今回するこちらの作品だ

 

 うるとら☆イレブン(94年31号~41号)

 薮野てんや・渡辺達也(WINNING RUN)

 

 作画担当の薮野てんやは90年に「情熱のクリッパー」で手塚賞準入選、増刊ウインタースペシャルに掲載されデビューを果たす。92年には「もののけサンタ」で赤塚賞佳作を受賞、翌93年サマースペシャルに掲載。そして94年31号から本作品で本誌初登場にして連載デビューを飾ったのであった

 一方構成担当の渡辺達也は、本単行本余白のおまけ漫画によると本職はスポーツライターで、本作品以外にもジャンプのサッカー記事を執筆、また、後年にはやはりジャンプのサッカー漫画である樋口大輔の「ホイッスル」の制作にも協力している

 そんな本作品は羅本斗志郎が所属する弱小サッカーチームの城東FCが、監督に布藤を迎えた事により変貌を遂げ、ライバルである難蛮FCに挑むサッカー漫画である

 主人公の羅本は実力があるものの独りよがりなプレイを繰り返し、他のメンバーも何をすればいいかもわからないといった有様の城東FCはチームとしての体を成さず36連敗を記録していた。このままでは勝利などおぼつかないとキャプテンの桂谷が布藤に監督を依頼、布藤はチームの勝利の為には戦術が必要であり、羅本にFWからMFに転向して個人プレイを控えるよう言い渡す。最初は反発した羅本だったが、布藤とチームのもう1人FWである火浦の2人対羅本たち11人という圧倒的に有利な勝負でゴールを奪われた事から考えを改め、生まれ変わったチームは初勝利を目指して難蛮FCとの試合に臨む、というのが本作品のあらすじである

 ではあるのだが、正直ストーリーなどたいして重要ではない。各話のタイトルが『ターゲットマン』とか『オフサイドトラップゾーンプレス』というところからもわかるように本作品はサッカーの戦術や選手の役割を解説する入門書的側面が大きいからだ

 そんな内容であるから本作品は最初から短期で終了する事は決まっていたのであろうし、10話で終了したのもアンケート結果に関係なく予定通りだったと思われる

 が、それを考慮しても内容が練れていないにも程がある。編集部サイドがどんな考えだろうが読者にとっては重要なのは面白いかどうかであり、仮に評判次第で連載を伸ばす考えだったとしてもそうはならなかっただろうと思うくらいには本作品の完成度は低い。羅本に火浦、キャプテンが桂谷で監督が布藤という名前からとっくに察している人もいると思うが、登場人物の名前はオフト監督時代の日本代表の名前を少しいじっただけでポジションもそのまんまだしキャラ付けも安直、話の流れもテンプレ中のテンプレで何の意外性も面白みもないのだから

 また、解説部分にしてもサッカーに興味がある人なら今更説明しないでも知っているようなものばかりである。キャラの見た目が大きくデフォルメされて小さな子供のようになっているところから、サッカーに興味を持ち始めたばかりの低年齢層がターゲットなのだろうが、サッカーに限らずその手の入門漫画を積極的に読みたいなんて人がどれだけ居よう。少なくともジャンプ読者の多くはそんなものを望んでいない

 本作品には読者を楽しませようなんて気持ちは全くない、とまでは言わない。が、それよりも当時黄金期の中でも最盛期を迎えていたジャンプの影響力を駆使してサッカーブームをさらに伸長させようという意図が優先されたとしか思えない。そのような経緯で生まれた本作品が名作になる筈もなく、ある意味では本作品こそが大人の都合に一番振り回された被害者だったのかもしれない

キャプテン岬、世界の頂点へ キャプテン翼Ⅱ攻略 最終章

 前回までで既に3回にわたって続いている「キャプテン翼Ⅱ」の攻略も今回で最後となる

 ワールドユースのアジア予選を勝ち抜き本戦出場を決めたところから再開

 

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 まずは本戦の予選リーグから。初戦はポーランド。要注意キャラは必殺技ローリングセーブを持ちネオタイガーすら防がれる可能性のあるGKのジャイッチと、必殺技は持っていないものの名前通りマッハの速さのドリブルでDFに追いつく余裕も与えずGKと1対1の状況に持ち込み、そこでドリブルかシュートかを二択を外すと高確率でゴールを決められるマッハー。ジャイッチに対してはこちらも1対1の状況を作るとローリングセーブは使ってこないのでそこからネオタイガーで吹っ飛ばせ。マッハーに対しては…祈るかレベルを上げてステータス差で圧倒するしか

 

 続いてイングランド戦。要注意は必殺技は持っていないが、ただのヘディングですらゴールネットを突き破る威力を持つロリマー。ロブソンは必殺シュートすらカットするが、DFのくせに攻め上がり気味でこちらのシュートコースに立ち塞がるケースがほぼ無いのであまり気にする必要はない

 

 イングランド戦後、ロベルトから翼に手紙が届くがこの攻略においてはただの無駄イベントだ

 

 お次はソビエト戦。今となっては懐かしい響きだ。ソ連じゃなくソビエトというところが特に

 さておき、要注意は背景以外はどこかで見たことある分身セービングを使ってくるGKラシン。どこかで見たように1対1だと使ってこないのでネオタイガーで吹き飛ばせ。あとベラロフはパスカット範囲が妙に広いので大きく避けてパスを回すかドリブル突破で

 

 そして予選リーグ最終戦は岬が中学時代を過ごし、キャプテンのピエールとも因縁浅からぬフランス。要注意はそのピエールとナポレオンで、ピエールはスライダーシュート、ナポレオンはキャノンシュートという必殺技を持つうえ、その2つを合体させたスライダーキャノンが大きな脅威である。スライダーキャノンはクロスを上げて貰わないと撃てないという制約はあるが、2人がパス交換しながら攻め上がるエッフェル攻撃から直接繋げる事が出来るのでどちらかがボールを持ったら撃たれると思った方がよい

 

 フランスに勝ったら決勝トーナメントに。1回戦のメキシコは名有りキャラがエスパーニャしかいないうえ、そのエスパーニャもほぼ空気なので問題あるまい

 

 次の相手はパーフェクトキーパーの異名をとるジノ・ヘルナンデス率いるイタリア。…なのだが、そのヘルナンデスは必殺技を持っていない事もあって影が薄い。「ファミコンジャンプ」ではこちらの攻撃を無効化したり跳ね返したりしてきて厄介だったのに。代わりに注意すべきはジャパンカップのローマ戦にもいたがほぼ空気だったランピオンで、ロケットヘッドは若林も吹き飛ばす

 

 お次はオランダ。当然クライフォートやクリスマンといった「ワールドユース編」のキャラは1人もおらず、無印のジュニアユースでも対戦していないのでオリキャラのイスマスがチームの中心である。他にリブタという名有りオリキャラもいるが、正直イタリアより印象が薄い。因みにロベルトから手紙を貰って以来ちょこちょこ挿入されていたイベントの結果、オランダ戦終了後翼がサイクロンを完成させるがどうでもいい

 

 次はお馴染み天才ファン・ディアス率いるアルゼンチン。他にディアスの相棒であるパスカル、さらにあのサンパウロの大エースであるバビントンまでいるのだが、そのバビントンが名前がついているだけのモブに成り下がっていたのが物悲しい

 

 アルゼンチンに勝つとベスト4。組み合わせはフランス対ブラジル、日本対西ドイツとなる。それにしても4回勝ってベスト4って事は最低でも64カ国も決勝トーナメントに残っていた事になるのだが…

 さておき、西ドイツの要注意キャラはハンブルガー戦にもいたカルツ、カペロマンに加えてGKのデューター・ミューラー、そしてなんといっても皇帝カール・ハインツ・シュナイダー…なのだが、何故かシュナイダーにボールが回ってくる場面が少なくファイヤーショットも1回しか撃たれなかったので拍子抜けする位アッサリ勝ってしまった

 

 さて、決勝進出を決めたところで、岬率いる全日本の最終的なステータスを見せておこう。パッと見だと翼のガッツが日向と並んで最高値だから翼を使っているじゃないか誤解するかもしれないが、岬との差と、あの森崎と同じレベルというところから使っていない事を証明出来たと思う

 

 そして迎えた決勝の相手はフランスを3-0で下し、メンバーは全て名有りキャラでその多くが必殺技持ちというスター軍団のブラジル。中でも特に注意すべきはカルロス・サンターナにGKゲルティス、そしてついに正体を現した謎の男コインブラ。…なのだが、コインブラは勿体つけて後半まで出て来ないうえ、名有りキャラが多い事が災いして別のキャラがぼこぼこシュートを撃ってしまってコインブラにボールが渡る場面が少なかったりする。更に運良くというか記事的には運悪くというか、ブラジルDF陣が何度もPKを献上してくれたので、5-1と西ドイツ以上に拍子抜けする結果となってしまった

 

 という訳で、無事ゲームをクリアしたところで改めて本ソフトの評価を下したい

 と思ったのだが、考えてみれば原作の主人公でありゲーム内で最強のキャラである翼を使わないというまともじゃないプレイをしているのだからまともな評価を下せる訳がない。そのせいで無駄にゲームの難度を上げてしまっているし、せっかくイベントで覚えたサイクロンを使ってみる楽しさもないのだから

 また、ストーリー面も翼を使おうが使わなかろうが関係なく翼中心、というかほぼ翼しかストーリーに絡まず、今回の攻略記事の主役であった岬もワールドユースに優勝した時でさえ一言しか出番が無く徒労感だけが残った訳だが、自業自得だからどうして文句など言えよう

マジでこの一言だけである

 

 なので、そのあたりの評価は避けるが、原作のファンとしては「ワールドユース編」では戦う事の無かったシュナイダーの(西)ドイツやディアスのアルゼンチンと戦う事が出来るのは嬉しい点だろう

 逆に嬉しくない点は、原作にいないオリキャラしかいないチームとの試合を無駄に増やした結果、途中で飽きてしまう危険があるところである。特に翼以外はオリジナルのモブキャラしかいないサンパウロで10戦もしなければならないのは、プレイしていて「この試合、やる価値あるか?」と疑問を抱いてしまった程だ。ゲームの導入としてまずサンパウロでプレイするというアイデアは悪くないと思うのだがせいぜい2、3試合で十分だし、特にジャパンカップは蛇足としか思えなかった

 その他、当時としては完成度の高かったシステムも現在の視点から見ると至らぬ点が少なくないなど幾つかの不満点があるが、それでもキャラゲーとしてのクオリティは高い方だろう

 ただ、もし本ソフトに興味を抱いてプレイしようという方がいるなら、プレイの際は私のようにプレイに自ら制限をかける所謂縛りプレイはしない、少なくとも一度は普通にプレイしてからやるよう強く注意しておく

 

地獄のジャパンカップからワールドユース予選へ キャプテン翼Ⅱ攻略 その3

 前々回、前回、に続き「キャプテン翼Ⅱ」の攻略を

 全日本の強化の為に開催されるジャパンカップに参加し、サンパウロを操作して戦うところから再開

 

 

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 初戦はローマ。久しぶりの翼抜き10人プレイに慣れずに先制を許したが、バビントン中心に攻めるいつものパターンを思い出して3-2で勝利すると、次戦のウルグアイ戦も2-1で勝利を収める

 

 だが、順調なのはここまでだった。次のハンブルガー戦は名有りのプレイヤー4人のうちメッツァは必殺技がパスだけなので直接的な脅威は無いが、カルツの針鼠ドリブルはキーパーまで吹っ飛ばしてそのまま無人のゴールにシュートを叩き込むし、カペロマンのサイドワインダーは早田のカミソリシュート同様コーナーキックから直接狙う事も出来るので対処が難しい

 

 そしてなにより厄介なのはS.G.G.Kこと若林で、翼抜きのサンパウロの面々ではクロスをスルーしてバランスを崩させる程度ではゴールを奪う事など出来やしない。ゴールを奪う方法は何とか若林をゴールから釣りだして、かつ、飛び出した若林がボールをセーブしきれずこぼれ球になったところを運よくこちらが拾って無人のゴールに叩き込むか、やはり運よく相手の反則でPKを獲得するくらいなので、勝利を収めるまで何度もやり直す事になってしまった

 

 だが、それすらも次の相手に比べればぬるま湯であった。そう、全日本に比べれば

 

 そのメンバーは岬をはじめ日向に立花兄弟に松山に次藤に早田etc…当然後半になったら三杉まで登場と、翼以外はほぼフルメンバーという顔ぶれである。そして対するは翼のワンマンチームから翼を抜いたサンパウロなのだから相手になる訳もなく、攻略の糸口すら掴めぬまま惨敗を重ねてしまう。更に負けるとハンブルガー戦からやり直しでまた若林相手に運よくゴールを奪うのを祈る作業に戻らなきゃならないという二重苦が。この辺りはあまりに苦しくてマジで何度も吐きそうになってしまった

 

 と、ここで1つ告白しなければならない事がある。攻略のコンセプトとして翼を使わないとこれまで何度も述べてきたが、全日本戦においては大量リードされて負け確な状態でもなお相手に必殺技を連発してこられると、その都度演出で無駄に時間が掛かる(特にスカイラブツインシュートは和夫、政夫、次藤と3人の掛け声から飛んでツインシュートと5度も演出が入る)し何よりウザいので、とっとと負ける為に翼にボールを預けてキープして貰ったのだ。自分で決めたルールを破ってしまって情けない話だが、これはあくまで勝つのを目的としない例外的行為という事でおおめに見て頂きたい

 さておき、ここまで負け続けるとこちらのレベルも上がってくるので徐々に接戦に持ち込めるようになり、都合何度やり直したか思い出せないくらいに再戦を余儀なくされたがついに全日本を破る事に成功、我らがバビントン率いるサンパウロは優勝を手にしたのであった

 

 これでようやくキャプテン岬が全日本を率いてワールドユースに臨む本編がスタートする。…のだが、当初予定した翼を使わないというだけでは先ほどまで散々苦労させられたジャパンカップでの全日本と変わらず強すぎると判断し、少しコンセプトを変更しようと思う

 

 そのコンセプトとは岬と、岬が代表以外でチームメイトだった事がある選手、具体的には南葛SCと南葛高、そして南葛小に転校してくる前に所属経験がある事が作中で明示されているふらの小と明和FCの選手だけでスタメンを構成する事である

 これに該当するフィールドプレイヤーはちょうど10人で選択の余地は無く、GKだけ基礎ステの高い若林か三角跳びを持つ若島津で悩んだが東邦戦での若島津が意外とザルだった事から若林でいく事に決め、結果スタメンは以下のようになった

 

 因みに森崎という選択肢が最初から無いのは説明不要であろう

 

 多少戦力が落ちるが2トップの日向と新田に加え松山も必殺シュートを持っているから得点には苦労しないし、GKが森崎やレナートとは段違いだからそうそう失点もしないだろうと楽観してまずはアジア予選に臨み初戦のシリア戦、次戦の中国戦は快勝を収めた

 

 …のだが、3戦目のイラン戦で雲行きが怪しくなってくる。まず攻撃面ではイランの反則覚悟のプレイとやらでドリブル突破しようとすると高確率で吹っ飛ばされるし、頼みの必殺シュートは早くも日向のネオタイガー以外では得点するのが難しくなってきてしまった。そして守備面では、実は初戦から懸念があったのだがこちらのGKがグレードアップした分相手のシュート力もアップしているようで、名無しの選手にすらちょくちょくゴールを許す始末。こんな若林の姿など見とうなかった。なにがS.G.G.Kか

 

 とはいえ所詮はアジア予選、サンパウロで全日本と戦った時と比べればなんて事はない。負けて再戦する事も何度かあったものの、それほど苦労する無くイラン、北朝鮮サウジアラビア、韓国と撃破し、本戦出場を決めたのであった

 

 一方その頃、世界各地でも予選が行われていて南米からは天才ファン・ディアス率いるアルゼンチンが

 

 欧州からはエル・シド・ピエール率いるフランスや皇帝カール・ハインツ・シュナイダー率いる西ドイツなど強豪国が続々と本戦へ名乗りをあげていた

 

 そしてワールドユースの開催国であるブラジルからも大ニュースが。なんとあのバビントン率いるサンパウロの監督だったロベルト本郷がブラジルユースの代表監督に就任したのである

 

 更に本戦に向けた調整として全日本がヴァスコ・ダ・ガマを一蹴した試合を見た後で記者たちが語り合ったところによると、ブラジルは唯一の弱点と言えるGKを強化する為イタリアのプロに所属している選手を招聘したという

 

 以上の2人に加えてカルロス・サンターナ、そしてグレミオ戦後に少しだけ登場した謎の男。最強の布陣を引いて迎え撃つブラジルが優勝候補の筆頭なのか? ついにワールドユース本戦が幕を開けようとしていた

 

 というところで今回はここまでにして、続きは次回に

ようやくキャプテン岬始動! キャプテン翼Ⅱ攻略 その2

 前回に引き続いて「キャプテン翼Ⅱ」の攻略を。何の活躍もせずにリオカップで優勝したサンパウロの翼の元に片桐が訪ねてきたところから再開

 

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 話はそれより少し前の日本に舞台を移し、高校選手権の本戦が始まるところから。因みに本ソフトでは昨年は南葛、一昨年は東邦が優勝した事になっているが、「ワールドユース編」では東邦が2連覇している

 

 南葛高のメンバーは↓の通りでサンパウロ同様控えはいない。南葛中から翼が抜けた代わりに岬と大友中勢の新田らが加入した感じで、戦力的にはゲームメーカーであり点取り屋であった翼の役割を岬と新田で分担した形。能力的には翼と比べると2人とも、特に新田は見劣りするが、使うのを制限しないでいいのだからサンパウロより遥かに楽である。それにしても大友カルテットのうち西尾だけハブられているのが物悲しい

 

 さておき、初戦は元比良戸中の次藤と佐野を擁する国見学院。初っ端から敵味方ともに必殺技が飛び交う点の取り合いとなったが5ー3で勝利

 

 続いては立花兄弟を擁する秋田。お馴染みのスカイラブハリケーンツインシュートに加え、守備でもスカイラブタックル、スカイラブパスカット、スカイラブブロックと何でもスカイラブをつければいいのかとツッコミを入れたくなったが、国見学院同様点の取り合いの末4-3で勝利

 

 続いての相手はたつなみ? どこ代表なのか漢字でどんな文字かもわからないが、東一中の早田と、中学時代は地区予選でその東一中に敗れた懐かしの巨漢GK中西がいるので多分大阪代表だろう

 さておき、ここで南葛の弱点が出てしまった。勿論守備である。というかこれまでの2戦も勝ちはしたが3失点しているし。前回の記事でサンパウロの守備陣をGKレナートは森崎クラス、センターバック2人は高杉クラスと評したが、南葛の守備陣は本当の森崎、高杉に石崎が加わった形。高杉の1人が石崎に替わった分サンパウロより良いと思うかもしれないが、森崎のスペックがレナートより劣るのでシュートまで持ち込まれた時は絶望である。そして早田はカミソリシュートをコーナーキックから直接狙ったりセンターラインの後ろからでもボンボン放ってくるので↓のような失点祭りになり何度かやり直すハメになってしまった

 

 お次の相手は天才三杉率いる武蔵医大付属。ここは前戦を何度かやり直してこちらのレベルが上がっていた事もあって楽勝となった。なにせ三杉のワンマンチームなのにその三杉は後半まで出て来ないので前半のうちに大量リードを奪い、後半は鳥カゴ作戦で三杉の出番を極力抑えて5-2で勝利を収める事が出来た

 

 準決勝の相手は松山率いるふらの。雪崩攻撃はウザいが結局松山のワンマンチームなので5-2で勝利

 

 そして迎えた決勝。相手は勿論日向率いる東邦である。ここまではわりと順調だったが流石に東邦相手では簡単にはいかない。なにせ日向が全く止められない、のは想定済みだったが反町にすらハットトリックを許し8失点の大惨敗を食らってしまう

 

 だが、いい意味で想定外の事もあった。GK若島津の守備が意外とザルだったので得点に苦労する事は無く、思ったより少ないやり直し回数で勝利を収め、無事優勝を飾る事が出来た

 

 日向は翼のいない南葛でよく戦ったと岬を讃えていたが、翼ならサンパウロでも地蔵だったがチームは優勝したぞ

 さておき、大会後全日本ユース代表に選出された岬たちはワールドユースに向けた強化の一環として各国のクラブチームを招待して試合をするジャパンカップに向けて合宿に入る

 

 ここで話はサンパウロがリオカップを優勝した直後のブラジルに戻る。当然このジャパンカップには翼も招聘され全日本の一員として戦う事になる…と思いきや、招待チームの1つがサンパウロで翼はサンパウロの一員としてジャパンカップに臨み、そしてプレイヤーも全日本ではなくサンパウロを操作する事に

 

  というところで今回はここまでにして続きは次回

ボクはキャプテン岬太郎 キャプテン翼Ⅱを攻略する

 前回「キャプテン翼Ⅱスーパーストライカー」の紹介記事を書いたので、いつものように今回からはその攻略を始め、クリア後に最終的な評価を下したい

 

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 とはいえ、テクモの「キャプテン翼」シリーズは有名であるのに加え、攻略するのに情報が必要なタイプのゲームでは無いので攻略の様子をそのまま記事にしたところで面白みに欠ける

 なので当ブログでは少し趣向を凝らし、キャプテンには主人公の大空翼ではなく前々回に紹介した短編集「ボクは岬太郎」の表題作の主人公である岬太郎を据え、更に「ワールドユース編」において賀茂が吐いた「大空翼が居なけりゃなにもできない」などという暴言が無能のたわごとで、翼などいなくても何の問題ない事を証明する為に翼には代表から外れて貰う…のはシステム上不可能なのでベンチに置いたまま試合に出さずにゲームを攻略したいと思う

 

 だが、この企画はいきなり暗雲が立ち込める事に。というのも、前回の記事で触れたが本ソフトは翼がブラジルに渡ってサンパウロFCに入団したところから始まり、まずはサンパウロFCを操作してゲームを進める事になるのだが、サンパウロFCには控えメンバーがいないので翼を試合に出さざるを得ないのである

 

 これはどうにも対応しようがないので仕方なく次善の策として基本的に翼は操作せず、勝手に相手のマークについた時には『うごかない』を選択、偶然こぼれ球を拾ってしまった時はすぐにパスを出させ、極力試合に関わらないようにさせる事にした

 

 さて、自分で勝手に制限しておいてなんだが、このせいで攻略は非常に厳しいものとなった。下の画像のガッツの数値を見るだけでお分かりだろうがサンパウロFCのメンバーは翼の他には誰も固有の技を持たないモブキャラ揃いという完全な翼のワンマンチームであるのに、その翼を極力使わず実質10人のモブキャラで戦わなければいけないのだから

 

 先を思うと頭が痛いがが決めてしまったものはしょうがない。この条件でリオカップに挑む事に

 

 一回戦の相手はフルミネンセ。流石に初戦は相手も弱く名前有りのキャラもいない。試合はジウとアマラウのゴールで2点を先制、反撃を1点に抑えて快勝となった。なお、極力翼を使わないなどといいつつコッソリ使ってゴールを決めるといったインチキをしていない証拠としてリオカップ編ではゴールシーンの画像を全て掲載する事を断っておく

 


 翼に代わってチームの中心を担ったのはバビントン。シュート力は低いがパスとドリブルが高い、日本で言えば滝みたいなヤツだ。この選手が攻め上がってクロスを放り込みダイレクトシュートを狙うのが基本的な戦術となる

 

 因みにフルミネンセ戦をサンターナが見ていてこんな事をつぶやいていたが誰の事だ? まさか地蔵化していた翼の事じゃないし、やはりバビントンだろうか


 さておき、次の相手はコリンチャンス。リベリオ、サトルステギという2人の名前有りキャラがいて苦戦が予想されたが、守っては相手のシュートがポストに当たって不発という幸運もあり無失点、攻めてはバビントンのクロスからジウがハットトリックを達成して3-0の快勝。因みにジウはシュート力が少しだけ高い、日本で言えば来生みたいなヤツだ

 

 続いてグレミオ戦、の前にイベントが。試合前にグレミオのGKであるメオンが訪れてきて翼に勝負を挑んでくる。勝負を受けた翼はドライブシュートを放つがメオンはそれを易々とキャッチして「俺にドライブシュートは通用しない」と言い放った

 

 ドライブシュートが通用しないと言われても元から放つ気は無いから構わないのだが、ドライブシュートすら通用しない相手に翼なしでどうやってゴールを決めればいいのか。不安になりながらもいつものようにバビントンがクロスを上げてジウのダイレクトシュートで攻めると、その度にメオンは「クッ」とか言ってなんとかパンチングで防ぐ情けない姿を晒す。実はメオンはダイレクトシュートに弱かったのだ

 

 と、ここで予想外の出来事が。なんと操作してないの勝手に翼がパスを貰ってオーバーヘッドキックでゴールを決めるというイベントが発動してしまう。予想外の出来事は更に続き、ジウのシュートがポストに当たって跳ね返った所を翼が勝手に押し込んで2ゴール目も決めてしまった

 

 幸い?サンパウロは3失点していたのでこの試合は敗戦、再戦時にはイベントは起こらず翼の活躍は幻に終わった。また、今後勝手にこぼれ球をゴールされないように翼をゴールから遠いサイドバックにコンバート、代わりに10番を任せたバビントンが期待に応える3アシストの活躍を見せて快勝を収めた

 

 その様子を見て翼との対決を待ち望むサンターナ

 

 と、対照的に失望する謎の男が

 

 さておき、次はパルメイラス戦。ここでサンパウロの弱点が露呈してしまった。それは守備の弱さである。攻撃も滝レベルのバビントンと来生レベルのジウ頼みと決して強い訳ではないが、それでもクロスからのダイレクトシュート、更にクロスをスルーして相手GKの体勢を崩させることで若干ではあるが得点確率を上げる事が出来たのだが、守備に関してはそんな小細工はなく選手の能力だよりのガチンコ勝負となる

 そしてサンパウロの守備陣はというと、守護神のレナートは日本で言うと森崎レベル、センターバック2人は高杉クラスである。であるならば、攻撃力の高い選手を擁する相手と戦った場合に↓のようになるのは必然だ

 

 ではどうすればいいかと考えた結果が発想の逆転である。攻撃を防げないなら相手に攻撃させなければいい。という事でこちらがボールを持ったらチンタラとパスをを回し続けて時間稼ぎをする鳥カゴ作戦に。つまらないプレイと思うかもしれないが、現実のサッカーの試合でもわりとよく見られる風景であるのでリアルだと言えよう

 

 さておき、パルメイラスとの再戦はバビントンのクロスからジウのダイレクトシュートで挙げた1点を守り切って勝利、続くサントス戦はバビントンのクロスが冴えわたり3-0と快勝して決勝進出を決めた

 

 と、ここでイベントが発生し、ロベルト本郷から伝説の選手ジャイロの話を聞かされる。流れからしてそのうち翼が新しい能力に目覚めそうな感じだが、どうせ翼は使わないので気にしない

 

 そして迎えたフラメンゴとの決勝。鳥カゴ作戦をしようにもこちらがボールを保持する前にサンターナの個人技でゴールを奪われ何度かやり直す事になったが、最終的には頼れる男バビントンが自ら決めた1点を守り切ってリオカップ優勝を決めた


 そして試合後、突如片桐が現れて事態は急展開を迎える、というところで話はひと区切り。見出しに反して岬が登場しないというタイトル詐欺みたいになってしまったが今回はここまでにして続きは次回に

 

原作よりも評価されたゲーム

 ゲーム界隈では既に漫画やアニメで人気を博した作品を原作にしたゲーム、所謂キャラゲークソゲーという話が半ば常識と言えるほどにキャラゲーの中にはクソゲーが多い。当然それはジャンプ作品を原作としたゲームも例外ではなく、当ブログでもこれまで何度となくクソキャラゲーを紹介してきた


 同時に、キャラゲーの全てがクソゲーという訳ではなく、良質なキャラゲーも少ないながらも存在し、そちらもまた当ブログで何度となく紹介してきた

 

 そして中には原作よりも面白いとまで評されるキャラゲーも少数も少数ながら存在したりするのである

 

 という訳で、今回紹介するのはその少数も少数に属するこちらのキャラゲー

 

 キャプテン翼Ⅱ スーパーストライカ

 テクモ

 

 さて、ゲーム版「キャプテン翼」というと本ソフトの前作はサッカーゲームでありながらアクション性はほぼ無くRPGSLGのようなコマンド方式のゲームシステムと、原作さながらの派手な演出が高い次元で融合した良質なゲームだという事は以前紹介したメガドライブ版「キャプテン翼」の記事でも触れたが、本ソフトはそのタイトル通りシリーズ第2作にあたる作品である。なので基本的なシステムについての説明は割愛させていただく

 

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 だとしても、現実でもサッカー人口を増やしたともいわれている原作よりも面白いというのは過剰評価ではないか? と思う方も多かろう

 勿論私もそんな無茶を言うつもりはない。ここでいう原作とは「キャプテン翼」は「キャプテン翼」でも多くの人が思い浮かべる第1作(以下「無印」)ではなく、94年18号から連載が開始された「キャプテン翼 ワールドユース編」(以下「ワールドユース編」)の事である。なので本ソフトも「無印」のように翼たちが小中学生時代の話ではなくジュニアユース優勝を決めた後、翼がプロサッカー選手になる為ブラジルに渡りサンパウロFCに入団して三年が経過したところから始まる

 ただ、いきなり前言を翻すようだが本ソフトは厳密に言うと「ワールドユース編」を原作にしたものではない

 というのも、本ソフトが発売されたのは「ワールドユース編」の連載が開始されるより前の90年の事であり、その為「ワールドユース編」で初登場するキャラがいないなど設定に違いがある。が、だからこそ本ソフトは「ワールドユース編」より面白いと言われているのだ

 ところで、「ワールドユース編」は連載期間が三年を超え、単行本も全18巻と数字を見ればまずまずの結果を残したと言えるだろう。ただ、「無印」と比べるとどちらの数字も半分であるし、話のほうも本編に先駆けて93年15号から「キャプテン翼ワールドユース特別編最強の敵!オランダユース」(以下「特別編」)が短期連載される程の因縁の相手である筈のオランダユース戦が碌に描かれず雑誌記事風に結果だけで処理されたところを見るに、編集部から当初の構想を全て描き切る猶予を与えられなかった=あまり評判が良くなかったと言わざるを得ない

 何故「ワールドユース編」は「無印」より評判が良くなかったのか?

 そもそも大ヒット作の続編が前作より評判が良くなる例が少ない、という事は置いといてその理由を推測するなら、主人公の翼を除いた前作の人気キャラがことごとく貶められるような描き方をされたところだろう

 一例を挙げると全日本ユース代表メンバーが、浦部とよくわからん奴らで構成されたリアルジャパン7なる連中に翻弄された挙句に日向や岬といった前作でもお馴染みの7人が代表から追放された事だ

 これには代表選手を鍛え直す為という目的があり、実はメンバーも浦部ともう1人以外は年上でユース代表の資格が無かったし、当然追放されたメンバーも程なく代表に戻る事になるのだが、それにしても小中学生時代に翼と激闘を繰り広げてきたお馴染みのキャラたちが、言っちゃなんだが名前有りキャラの中ではたいして存在感の無い浦部に翻弄されるなんて格落ち感が半端ない。しかもその戦いにはブラジルにいる翼が不在で格を保たれている上、リアルジャパン7の指導者で後にユース監督になる賀茂が岬に向かって「大空翼がいなけりゃ何もできない」などと罵倒するのがポイントが高い。勿論悪い意味で。何かを貶すのに他の何かの名前を出すのは名前を出された方のイメージが悪くなりがちで大変よろしくない手法だろうに

 格落としの魔の手は海外選手たちにも忍び寄り、前作最後にして最強の相手である(西)ドイツとそのキャプテンである皇帝ことカール・ハインツ・シュナイダーすらもその手から逃れられない。ドイツは「特別編」でオランダに敗れたのをはじめ、「ワールドユース編」に入っても予選リーグではステファン・レヴィンなるポッと出の新キャラが率いるスウェーデンに5-3で敗れると、決勝トーナメントでは「ワールドユース編」の最後の相手となるカルロス・サンターナ率いるブラジルに5-0で大敗と、日本と戦う事すらなく姿を消してしまっているのだ

 別に「ワールドユース編」でも決勝でドイツと戦わせろなどと言う気は無い。だが、「無印」で最強の相手がただの引き立て役にされるのを見て喜ぶファンなどいるだろうか? 私はファンというほど熱心な読者ではなかったが、それでもドイツだけじゃなく「無印」で激闘を演じたファン・ディアス率いるアルゼンチンやジノ・ヘルナンデスのイタリアなどが名有りのモブレベルの存在感しか無く敗れ去ったのを見て拍子抜けしたのを憶えているし、逆に「ワールドユース編」が初登場になる新キャラの事は殆ど憶えていなかったりする

 翻って本ソフトを見ると、「ワールドユース編」より前に作られたゲーム故に「無印」キャラを貶めるポッと出の新キャラはおらず、ちゃんと(西)ドイツやアルゼンチンとも戦う事も出来るし、それでいて「ワールドユース編」最後の相手となるブラジルのカルロス・サンターナは、実は初出が86年の劇場版アニメ「キャプテン翼世界大決戦‼Jr.ワールドカップ」なのでしっかりこちらでも最後の相手として登場している。だからこそ「ワールドユース編」のストーリーに不満だった人の琴線に触れ、原作以上に評価されているのである

 

 

 とはいえ、本ソフトはあくまで試合をメインとしたゲームであり、ストーリーが語られる部分は試合の前後にちょっとした会話があるのと、稀に試合中にイベントがあるくらいなのでそこの部分には過度に期待するものではない。あくまでフレーバー程度に本物の「ワールドユース編」とは違う良い意味でのifの話を体験できるゲームという認識でプレイするのがいいだろう。それだけでも十分楽しいゲームであるし

ボールの友達の友達の話

 今回紹介するのはとあるジャンプ作家の短編集である。…のだが、そのタイトルを見ただけで誰の短編集で、どんな話が収録されているのかわかる人も少なくないだろう。それどころか勘のいい人なら当記事の見出しを見ただけで気付くかもしれない

 一体それは誰の事か? バレバレかと思うがクイズに付き合って欲しい

 

 問題の短編集のタイトルはこちらである 

 

 ボクは岬太郎

 

 答

 え

 は

 わ

 か

 っ

 た

 だ

 ろ

 う

 か

 ?

 

 そう、作者は「キャプテン翼」でお馴染みの高橋陽一で、短編集のタイトルにもなっている作品は「キャプテン翼」の主人公である大空翼とはゴールデンコンビとも称される名パートナーの岬太郎を主人公とした話である。そして、野暮ではあるが記事の見出しを説明させてもらうと、翼の「ボールは友達」という有名な言葉から翼=ボールの友達で、その翼の友達である岬はボールの友達の友達となる訳だ

 

 作者は平松伸二のアシスタントを務めつつ「友情のイレブン」、「番長キーパー」、「悪友バッテリー」、「おんぼろエンゼルス」とフレッシュジャンプ賞佳作を何度も受賞、80年には「キャプテン翼」で同賞入選を果たすと同年18号に掲載されてデビューを飾る。因みにこの時の主人公の名前は翼太郎で、そこから連載化に伴い主人公が大空『翼』となり、残った『太郎』が岬の名前に当てられるのだからその点でも2人は名コンビだと言えるだろう

 さておき、同タイトルで翌81年18号から連載デビューを飾るといきなりTVアニメ化するなど大ヒットを飛ばしただけじゃなく海外向けに翻訳され、中田英寿ジネディーヌ・ジダンなど国内外の有名プロサッカー選手が「キャプテン翼」を読んで憧れていたと言うほどサッカー界に影響を与える事になるのは有名な話である

画像はゲーム(メガドライブ)版

 

 また、連載終了後もジャンプでの「ワールドユース編」をはじめヤングジャンプグランドジャンプと掲載誌を変えて何十年にもわたってシリーズ作品を連載し、シリーズがようやく完結したのは昨年の事であった

 本単行本はそんな高橋陽一の短編集の第2弾で、「キャプテン翼」を連載中に並行して描いた作品を収録したものである

 

 

 収録作品は以下の通りで掲載誌も併記しておく

 

 ボクは岬太郎         フレッシュジャンプ84年5月号&6月号

 卒業 100Mジャンパー2  85年17号

 BASUKE           87年5号&6号

 

 

 ここからは作品の説明を

 

 ボクは岬太郎

 

 本単行本の表題作で、上述の通り「キャプテン翼」の登場人物である岬太郎を主人公にしたスピンオフ作品。内容は南葛SCが全日本少年サッカー大会に優勝し、太郎が南葛小から転校して一カ月後の話で、パトロンからフランスで絵画の勉強をするよう勧められた父の一郎の元に離婚した母の由美子が訪ねて太郎を引き取りたいと申し出てくる。これまで自分の都合で全国を転々とさせてきた父は、息子の事を考えた末に太郎と母を引き合わせようとするのだが、太郎の心中は…というサッカー&家族ドラマ

 

 

 卒業 100Mジャンパー2

 

 タイトルに『2』とあるように82年13号に掲載された「100Mジャンパー」の続編。内容は高校生にしてノルディックスキージャンプ選手である北斗千春が、卒業という人生の節目を迎えて選手として、そして卒業後は離ればなれになる幼馴染のみゆきとの関係に懊悩するスキージャンプ&青春ドラマ

 

 

 BASUKE

 

 場助中バスケットボール部員である明間佳介は、全国大会の決勝で憧れの選手であった大橋武彦が引退後に総監督を務めている東政大付属中と対戦、終了間際にキャプテンの須本が放ったシュートが外れて優勝を逃してしまう。それからしばらく経ったある日、大橋が須本に東政大付属高の特待生待遇と引き換えに試合で手を抜くよう要請していた事を知ってしまいショックを受ける。というバスケ漫画

 

 以上、収録作品の3本は大ヒット作の「キャプテン翼」と同じサッカーだけじゃなくテニス漫画の「翔の伝説」や野球漫画の「エース!」など色々なスポーツ漫画を描いてきた作者らしく種目的にはバラエティに富んだとも、結局みんなスポーツものだからバラエティが貧弱とも言えるラインナップとなっている

 また、内容について3作品に共通して言えるのは、短編という限られたページではスポーツシーンを中心に描くのは厳しいのか、ドラマメインの作品になっているので「キャプテン翼」のような派手な試合を期待すると拍子抜けするかもしれない

 それにしても作者はスポーツ以外を題材にした漫画を描いた事はあるのだろうか? 調べた限りだと短編含め1作も見つからなかったのだが