黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

今更マガジン漫画を読んでみる 後編

 今回は前回に続いて「金田一少年の事件簿」を読んで最後に作品の評価をしたい



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 という事で今回読むのは短編集の「鏡迷宮の殺人」で、収録作品は以下の通りである

 

 鏡迷宮の殺人

 金田一フミ誘拐事件

 金田一フミの冒険

 白銀に消えた身代金

 フィルムの中のアリバイ

 金田一少年の報酬

 

 ところで、私は推理小説では長編よりも短編の方が好きである。マニアの中には短編なんてただの犯人当てクイズと変わらず物語に深みがないなどと長編より下に見ている人もいるが、私からすればまさにその犯人当てクイズが好きで、長編は私にとってはどうでもいい過去描写とかお決まりの疑心暗鬼からのもめ事とかに中身を割いて水増ししている感がするのだ

古い作品ばかりなのは私が古い人間なので…

 

 なので、前回の「学園七不思議殺人事件」よりも今回の方が期待しているし、また、短編とはいえ1冊で複数のエピソードが読めるので作品全体の判断を下す為のサンプルが増えるという意味でも役に立つのではないかと思っている

 という訳で、まずは各作品のあらすじを

 

 鏡迷宮の殺人

 

 深雪、そして親戚の子である二三と一緒に遊園地のミラーハウスに入った金田一は、不意に女性の悲鳴と警報ブザーを耳にしてそちらに駆けつける。と、そこには園内で知り合った女子大生4人組の1人、小峰円が死体となっていた。死体発見当時、ミラーハウス内には金田一たちを除くと4人組の残り3人しかいなかったが、状況的に3人とも円を殺す事が出来ないようだった。という不可能犯罪もの

 

 金田一フミ誘拐事件

 

 タイトル通り金田一の親戚である二三が主役の外伝的エピソード。フリーマーケットの帰り道、売上金を預けようと裏道を通って銀行に向かった二三は、偶然銀行強盗犯と鉢合わせしてその顔を見てしまった為に誘拐され、アパートの一室に監禁されてしまう。助けを求めて密かに金田一と電話を繋いだ二三は、犯人との会話の中にヒントを忍ばせて監禁場所を伝えようという場所当てもの

 

 金田一フミの冒険

 

 これも二三が主役のエピソード。猪熊先生やクラスメート達と鳥首村を訪れた二三は、夜に鵜飼い漁を見た後、意中のクラスメートである青柳と二人きりで夜道を散策していたところ、川べりで鵜飼いの鵜のように首を縄で括られ、口に鮎を詰め込まれた死体を発見してしまうという見立て殺人もの。この話だけ推理が外れてしまった

 

 白銀に消えた身代金

 

 深雪、二三と一緒にスキー旅行に来た金田一が宿泊するホテルで国会議員の息子である黒塚巧の誘拐事件が起こった。犯人は身代金として3000万円を要求してその運び役として金田一を指名、金田一は指示に従い身代金を山小屋の前に置いてあったカバンに詰め替える。やがてカバンを取りに来た人物が現れ見張っていた警察に逮捕されるが、捕まった人物はカバンを取ってきたら金をくれるというから取りに来ただけだと主張した上、身代金を入れたカバンは空っぽになっていた。という消失トリックもの。犯人とトリックは当たったが、理屈の面でどうしてそうなるのかとモヤモヤが残った

 

 フィルムの中のアリバイ

 

 日比谷で深雪がひき逃げ事故に遭い意識不明になってしまった。現場に居合わせた金田一が咄嗟にひき逃げした車の写真を撮影したおかげで容疑者は3人のカメラマンに絞られたが、3人とも事故があった時に日比谷にはいなかったと証言し、証拠としてその日に撮影した写真を見せるのであった。という写真トリックもの

 

 金田一少年の報酬

 

 剣持刑事が金田一に屋台のおでんを奢りつつ酒を呑んでクダをまくというおまけの6ページ漫画

 

 

 以上のエピソードを読んだ感想であるが、まず思ったのは小説と違って漫画で、少なくとも問題編で1話、解答編で1話と両方のボリュームが同じという形態で推理ものの短編をやるのはよろしくないという事だ。というのも、問題編が1話だけではページが足りずにシンプルな事件にしなければならないので話は端折って強引になっているし、ミスリードを誘うような多くの情報を散りばめる事が出来ずにヒントはあからさまな形になってしまっている。…推理を外した話もあるのに何を言っているんだと思われるかもしれないが。逆に解答編はページが余り気味になりチープなドラマで水増ししてバランスが悪く感じてしまうのである

 それを踏まえて最終的な評価を下そう

 流石に何年も続いた人気作品とあって、完成度はこれまで当ブログで紹介した黄金期ジャンプで短期終了した推理ものより優れていると感じた

 

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 一方で、もっと読みたいと思うほど気に入ったかというとそうでもなく、正直な感想としては暇な時に本作品の単行本がその辺に転がっていたら手に取るかな、という程度だ

 ただ、フォローする訳ではないがそもそも年をくってから初見で少年漫画を読む事自体がよろしくなかったという気もする。というのも、少年漫画は作風的に細かい事を気にせず勢いと雰囲気で話に引き込むような面があるが、年と共に余計な知識やモラルを身に付けた今となっては細かいところが気になってスッと物語に入っていけないのである

 そういう意味では私はもうマガジン作品を楽しむ事が出来ない体になってしまったのかもしれない