以前の記事で触れたが私はジャンプ以外の三大少年漫画誌については、サンデーは結構読んでいたのとは対照的にマガジンは自分に全く合わない感じがして人生において両手で足りるくらいしか読んだ事が無いし、最後に読んでから三十年近くは経っている。…まあ、ジャンプもサンデーも二十年近く読んでいないが
だが、年を重ねると好みも変わるもので、子供の頃は嫌いだった食べ物が大人になったら好きになったという経験を持つ人は少なくないであろう。であるならば、当時は全く合わなかったマガジンも今読んでみると意外と面白く感じるのではなかろうか
という訳で、今回は今更ながらマガジン作品を読んでみようと思い立ち、まずはこちらの作品を読んでみた
数あるマガジン作品の中でも本作品をチョイスした理由は2つある。まず1つは、私は推理小説を読むのが趣味というほどではないがそれなりに読んでいるのでジャンル的には好みに合いそうだという事。そしてもう1つは原作を務める天樹征丸が、半ばネタとしてではあるものの唯一読んでいたマガジン作品の「MMRマガジンミステリー調査班」の登場人物であるキバヤシのモデルとなった人物らしいと知ったからである
尚、今回読んだのは画像に挙げた文庫版の2冊であるが、何故この2冊を選んだのかというと単に近所のブックオフに行って探したところ110円で売っていたのがこの2冊だけだったからというだけで他意はない事は断っておく
という訳で、まずは「学園七不思議殺人事件」の方から読んでいこうと思う。が、その前に私の同作品に関する知識がどれだけあるか発表しておくと、主人公は名探偵金田一耕助の孫という設定の金田一一で決め台詞は「じっちゃんの名にかけて」。以上である、いやマジで。あとは何度か実写ドラマ化されている事は知っているが一度も見た事が無いし、金田一の役は結構替わっていたと思うが堂本剛以外に誰が演じていたかも全く覚えていない
まず、本エピソードを読んでいない人や憶えていない人の為に説明すると以下のような感じである
金田一の通う不動高校の木造校舎には、魔の十三階段やあかずの生物室といった七不思議と呼ばれる怪談があり、七つ全てを知った者は放課後の魔術師なる人物に殺されるという伝説がある。そして木造校舎を取り壊して鉄筋の校舎を建てるという話が持ち上がった今、放課後の魔術師の名で木造校舎を取り壊すと七つの呪いが降りかかるという脅迫状が何通も学校宛に届いていた
それに興味を持った桜樹るい子を会長とするミステリー研究会の面々は部外者の金田一も巻き込んで七不思議及び放課後の魔術師の事を調べようとするが、るい子があかずの生物室の怪談と同じ状況の首吊り死体となって発見される。惨劇はそれにとどまらず、続いて会員の尾ノ上が首吊り大イチョウの怪談になぞらえて殺され、更に魔の手は幼馴染の深雪にまで…
とまあ、テーマ的にはベタな見立て殺人ものである。が、そこにミステリー研究会内の愛憎渦巻く人間関係とか、学校の敷地は戦時中は軍の施設が建てられており、そこで非人間的な実験を行った科学者こそが放課後の魔術師だという胡散臭げな話がトッピングされており、話の引きと雰囲気作りは上手だと感じられる。冷静に考えると七不思議の内容とかの細部は不自然で突っ込みたい部分もあるのだが、所詮学校に伝わる噂なんていい加減なものと考えるとある意味ではリアルとも言えよう
だが、それだけに正直解決編には落胆させられた
推理ものにおいてネタバレはタブーであるから詳細は省くが、第1の事件の時点で犯人はあいつだと丸わかりだし、トリックについてもミスリードに引っ掛かった訳でなく単なる勘違いのおかげである部分では間違っていたが概ね合っていた。結構な数の推理小説を読んでいても滅多に犯人をあてる事などない私がである
とはいえ、基本的にマニアしか読まない推理小説と違って読者の多くが推理なんかにゃたいして興味のない少年向けの漫画なのだからこのくらいの難度で丁度いいのかもしれないし、解決編前の情報のみで犯人が分かるという事は推理ものとしてちゃんと成立している証拠でもある
それより残念なのは、動機が全くのノーヒントではないにしろ与えられた情報だけで推理するのはほぼ不可能で、動機の大元となる出来事に至ってはどう考えてもわかる訳ないし、そもそもその出来事自体が不自然過ぎてツッコミたくなるところだ。その上、その出来事は世間には秘密にされていた、というか、その秘密を守り抜く事こそが動機なのに何故か金田一が調べた形跡すらないのに詳細を知っていて語りだした時には自分が読み落としていた部分があったのかと思って慌てて読み返したがやっぱり何もなくて混乱してしまった
以上の事から読後感は事件が解決したというスッキリした気分よりもモヤモヤの方が勝ってしまい、あまり楽しくなかったというのが正直な感想だ
だがこれはあくまで1エピソードを読んだ感想でしかないので、作品としての判断はもう1冊の方も読んでから下したいと思う。…のだが、少し長くなったので今回はここまでとして続きは次回に