以前当ブログで「ファミコンジャンプ英雄列伝」を紹介した際、同作品も含めてキャラゲーはクソゲーばかりだと述べた。だが、全てのキャラゲーがクソゲーという訳ではなく、中には良作ながらもキャラゲー=クソゲーというイメージのせいで売り上げが奮わなかったという不遇なゲームもある。…まあ、そんなゲームはキャラゲー全体からすれば少数であるのだが
という訳で今回紹介するのはその少数にあたるこちらのゲームだ
ファミコンジャンプⅡ 最強の7人
91年12月2日
そう、何の因果か「ファミコンジャンプ 英雄列伝」の続編である
前作で16人のヒーローたちがピッコロ大魔王を倒して平和を取り戻したジャンプワールドだが、精霊が宿る大神殿の炎の部屋で雄々しく燃え盛っていた筈の友情・努力・勝利の炎が消えかけており、再び異変の兆しが見えてきた。それに心を痛めた精霊は大神殿の扉を封印し、ジャンプワールドで最も勇敢なヒーローを7人選び出した、というのが本作品の設定だ。前作には精霊も大神殿も全く存在しなかったけど突っ込んではいけない。漫画もそうだが後付けで設定が生えるのはよくある事である
プレイヤーキャラは孫悟空、剣桃太郎、空条承太郎、タルるート、ターちゃん、前田太尊、両津勘吉の7人で、そのうち前作からの続投組は悟空と桃、あとはジョセフから承太郎に代替わりはしたがジョジョの3組のみと時代の移り変わりを感じる顔ぶれとなっている。悟空も前作では子供だったのが大人になったし。そして前作で主人公であったオリジナルキャラが居なくなった代わりに、始めに上に挙げた7人の中から1人を選んでプレイを開始するとまずは選んだキャラのストーリーが始まり、それをクリアすると残りの6人のストーリーを順番にプレイしてだんだん仲間を増やしていくというマルチオープニングシステムなるものを採用しているのが特徴だ
ところで、上でも述べたが「ファミコンジャンプ英雄列伝」はクソゲーであった。これは私の個人的感想だけではなく、当時ジャンプ作品のゲーム化などで集英社側の窓口を務めていたマシリトこと鳥嶋和彦も「ファミコン神拳!!!」のインタビューでもハッキリ語っており、ライターであったゆう帝こと堀井雄二などは「こんなゲーム紹介したくない」などとぼやいたという。そして、それを聞いた鳥嶋が「そんな事言うなら堀井さんが作ってよ、中村さん(「ドラゴンクエスト」の開発会社であるチュンソフトの創業者)も巻き込んで」と言ったところ堀井が了承し、堀井雄二が監修、チュンソフトが(アクアマリンとの共同)開発というドラクエチームで本作品が制作される事になったのである
そういう経緯から作り手が替わっているので本作品は前作から設定とストーリーは引き継いでいるが、ゲームとしては変わらなかったところが無いと言えるようなレベルで別物となっている。まず戦闘においては、前作がフィールド上にいる敵に接触すると戦闘が始まるシンボルエンカウント方式であるのに対し、一歩移動するたびに確率で戦闘が始まるランダムエンカウント方式になっている。また、戦闘自体も前作が近距離攻撃と遠距離攻撃だけでアイテムを使用する事も逃げる事も出来ないアクション戦闘だったのに対し、シミュレーションアクションシステムと称されるターンベースの上にSLGのようにキャラを移動させて攻撃しあう独特の戦闘となっている。しかも戦闘が終了する毎に体力が全快する仕様となっているので、前作では問題となった体力回復手段が少なすぎるという難点も解消されている。他にも様々な部分に手が入れられ、フィールド上ならどこでもセーブが出来るようになったり、戦闘で全滅したら任意で全滅地点まで戻してくれるなど、出来るだけプレイヤーが行き詰らないような作りになっており、ユーザーフレンドリーさは前作とは段違いだ。このあたりは流石にドラクエを作った人たちだと感心させられる
ただ、前作と比べて悪い所もないではない。戦闘システムが変わったせいで1回の戦闘にかかる時間が増えてしまった上、シンボルエンカウント方式からランダムエンカウント方式に変わったせいで戦闘を避ける事が難しくなってしまったので、途中で戦闘がダルくなってしまいがちだし、前作はジャンプ歴代作品からプレイヤーキャラだけでなく敵キャラやサブキャラとして色々キャラクターが登場したのに、本作品はサブキャラもプレイヤーキャラが登場する7作品からしかキャラクターが出てこないのでお祭り感が失われているのも残念である
そういった欠点は些細な事と片付けられるレベルではない。が、良い点の方がはるかに多いので本作品は名作と断言する事は出来ずとも、少なくともプレイした者を失望させるようなものではないし、前作よりも出来が良いのは間違いない。にもかかわらず、売り上げは前作を遥かに下回ってしまった
それは何故か? 本作品が発売された時期はスーパーファミコンが発売されてから一年が経って、家庭用TVゲーム機のメインストリームがファミコンからスーファミに移行しつつあったという理由もあるだろうが、最大の理由は前作がクソゲーだった為に誰も本作品に期待していなかったという事に尽きる。実際私も前作で懲りて本作品には全く期待せずにスルーしたし、ファミコンジャンプミニを購入してプレイしてみるまではクソゲーだと信じて疑わなかったほどだ。まさに親の因果が子に報うである。前作ノータッチなのに担ぎ出された堀井雄二やチュンソフトは気の毒な話だ。バンダイに関しては自業自得であり一切同情の余地はないが
本作品が売れなかった事でジャンプのオールスターが登場するゲームが作られなくなったかというと全くそんな事はなく、93年にはゲームボーイ用ソフトのクイズゲームである「カルトジャンプ」が発売され、その後少し間隔が空いたが「ジャンプスーパースターズ」や「ジャンプアルティメットスターズ」、「JUNP FORCE」など、更に今年はジャンプ+のオールスターゲームである「キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小″冒険」が発売されるなど未だ作り続けられていたりする。それだけジャンプのゲームというのは需要があるという事なのだろうがバンダイの業の深さを感じる