黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

ハンター×ハンター(HUNTER×HUNTERではない)

 本日は「モンスターハンターRISE」の大型DLC、「サンブレイク」の発売日である。思い起こせば「モンスターハンターRISE」の発売時、当ブログではタイトルそのままの「モンスターハンター」をはじめ、ハンターと名の付く作品を色々紹介したものだ

 

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 そんな訳で今回は、やはりハンターと名がつく作品であるが、当時は単行本を未所持だった為に紹介しそびれたこちらの作品を紹介したい

 

 不思議ハンター(92年32号~48号)

 黒岩よしひろ・飯塚幸弘

作者自画像

 本作品は以前紹介した「不思議ハンターS」が連載化されたものであり、そこまでの経緯はこちらを参考にされたし

 

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 そして、92年32号から本作品の連載が開始される事になったのだが、その際に原作者が付けられるという大きな変更がなされている。まあ、「不思議ハンターS」は上の紹介記事にもあるように、ネームに一ヵ月から二ヵ月もかけて描いたものだから、そのまま週刊連載をさせてはとてももたないという判断は妥当であろう。だが、それで付けられた原作者が、「モンスターハンター」の原作担当であった飯塚幸弘だったというのはなかなか奇遇な話だ。おかげで本作品は「不思議ハンターS」と「モンスターハンター」のコラボ作品、ハンター×ハンターという事になる訳だ

 そんな原作者の飯塚幸弘は、「モンスターハンター」の記事を書いた際には紹介するような情報が殆ど無かったが、今回紹介する為に調べ直しても新たに判明した事は「モンスターハンター」掲載後、88年増刊スプリングスペシャルにて松長春樹が作画を務める「ウルフJ」と勝山英幸が作画を務める「クライムブルース」と2作品の原作を担当したくらいしかなかった

 ところで余談だが、黒岩よしひろの作品は本作品の前身にあたる「不思議ハンターS」も含めて殆どが電子書籍化されているのに本作品だけ電子書籍化されていないのは、原作者である飯塚幸弘と連絡がつかないので許諾も取れないのが原因ではないだろうか。同じく黒岩よしひろ作品で他の原作付き作品は電子書籍化されているので原作付き作品自体が駄目という訳でも無さそうだし。おかげで今回紹介記事を書く為に電子書籍版を所持している「不思議ハンターS」とのセットで購入するハメになってしまった。私はコレクターではないので紙の本と電子書籍の両方欲しいなどとは思わないから無駄な出費としか。まあ大した出費でもなかったが

 さておき、本作品は原作者が付けられた為か否か、「不思議ハンターS」と違う部分が色々見られる。特に大きな違いは、具体的な年齢は明かされていないが主人公の雷門竜太が怪奇現象の解決を仕事としている職業ハンターから学生ハンターに変更され、妹の空子共々若くなっている事と、竜太が天神二刀流なるものの使い手となっており、それを駆使したバトル要素が強くなったところだろうか

 その変更理由は察する事が出来る。まず主人公たちの年齢を下げたのは読者層に合わせたのだろう。ジャンプの他の漫画を見ても主人公は中高生くらいの場合が多く、主人公とそれを取り巻く人たちの年齢がそのままターゲット層の年齢である事は少なくない。そして、バトル要素が強くなった事については言わずもがなである。いずれもジャンプに合わせた変更と言えるのだが、逆に言えば周りの漫画も大抵そうなので差別化が出来ていないとも言える

 一方、話の流れについては「不思議ハンターS」も「モンスターハンター」も、根底には本当に悪いのはモンスターや妖怪より人間の欲望という勧善懲悪思想が流れている為か、読み比べても別人が考えたと思えないくらいに馴染んでいて新たに紹介するべきところは特にないくらいだ。その点においては両者は相性が良いと言えよう。だが、そもそも論として黒岩よしひろは話作りに定評がある方ではないので、原作者をつけて同レベルというのはさして強みになっていない。今改めて読んでみても決して悪いとは思わないのだが強いインパクトも感じられず、当時のジャンプの連載陣の中では埋もれてしまうだろうな、というのが正直な感想である。実際、私は本作品をリアルタイムで読んでいたにも関わらず話を全く憶えていなかったし

 まあ、そんな感じの作品なので17話で終了してしまうのもやむ無しである

 と、部外者に過ぎない私は気楽に言えるが、当事者たちにとってはせっかくのチャンスをふいにしてしまって痛恨の極みであろう。特に過去の連載作品が悉く短期終了してしまって後が無かった黒岩よしひろの悔恨は大きかったようで、単行本2巻のあとがきで3ページにわたって心情を吐露しており、作品に対する真摯な姿勢とままならぬ思いがヒシヒシと伝わってきて、ある意味では本編以上の見どころと言える

 

 そして本作品の連載終了後、原作担当である飯塚幸弘は本人らしきツイッターアカウントが確認された以外は全く足取りが掴めないのは「モンスターハンター」の記事でも触れた通りである。一方、作画担当である黒岩よしひろは、92年には月刊ジャンプ谷菊秀原作の「鬼神童子ZENKI」の連載を開始、TVアニメ化されるほどの人気を獲得するも本誌に戻る事は叶わず、その後は集英社からも離れて執筆活動を続けていたが、18年5月8日に心筋梗塞で亡くなってしまう。享年55、あとがきで語っていた「不思議ハンターS」の続きを描きたいという希望は結局果たされないままであった