黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

ジャンプロボット大戦

 前回当ブログではロボットが主人公である「SCRAP三太夫」を紹介したわけだが、ロボットが登場する漫画は他にも数が多い。古くは「ロボット三等兵」や「鉄腕アトム」から始まり、メジャー中のメジャー作品である「ドラえもん」、ジャンプでは「Dr.スランプ」、当ブログで紹介した短期終了作品では「AT Lady!」に「すもも」など枚挙に暇がなく、定番のジャンルの1つと言える

 だが、その多くはサイズが人間大で自我を持っているロボットばかりで、パイロットが中に乗り込んで操縦する巨大ロボットが出て来る漫画は、アニメのコミカライズやメディアミックス作品を除くとかなり少ない。ジャンプにおける有名な巨大ロボット漫画は歴代で見ても「マジンガーZ」くらいで、これもまたアニメ主導の作品である。巨大ロボットは動いてこそ華だという事だろうか

 そんな有様であるからジャンプの黄金期においても巨大ロボット漫画は皆無である。…唯一この作品を除いては

 

 魔神竜バリオン(87年22号~32号)

 黒岩よしひろ

画像は電子書籍版です

  作者の経歴についてはこちらを参考にされたし

 

shadowofjump.hatenablog.com

 そして「サスケ忍伝」の終了後、87年増刊ウインタースペシャルで「魔神ZO」を掲載、同年22号から本作品の連載を開始したのであった

 そんな本作品は志羽竜樹が乗り込む巨大ロボットの魔神竜バリオンと、人類を滅ぼそうと企む秘密組織のハロウィーンとの戦いを描くロボットアクション漫画である

 竜樹の父はロボット工学の分野で天才と謳われた科学者だったが、謎の失踪を遂げていた。それから一年が経ったある日、父が作り、竜樹が17歳になった時に起動するようプログラムされていた小型アンドロイドのアリスが竜樹の前に現れる。そして父が開発したバリオンシステムを手に入れ、人類を滅ぼす為に利用しようとしたハロウィーンによって一年前に父が殺されていた事、そのバリオンシステムを搭載した巨大ロボット、魔神竜バリオンが研究所の地下に隠されている事を告げられるのだが、そこにハロウィーンの刺客が襲いかかってくる

 ところで、単行本のあとがきで作者の漫画は師である桂正和や、永井豪の漫画と似ているとよく言われると本人が語っているが、なるほど確かに本作品にも両者の影響が見て取れる

 以前紹介した「サスケ忍伝」もそうであったが見た目に魅力的な女性キャラの数々は桂正和譲りであるし、主役ロボットであるバリオンは「マジンガーZ」と「機動戦士ガンダム」をあわせたようなデザイン、そして設定は「機動戦士ガンダム」以来当時も今も主流と言える、設定が比較的現実的な所謂リアルロボット路線ではなく、悪の組織の野望を阻むために主人公が奮闘するというクラシックなスーパーロボット路線となっている。また、それは桂正和が初期に好んで描いた特撮ヒーロー風作品とも近いものでもある

コレとかとそっくりである

 だが、その組み合わせは決して相性が良いとは言えない。桂正和の描く女性キャラに惹かれるような読者は、既に性に興味を覚えた比較的高年齢層が主であるのに対し、スーパーロボット路線は「マジンガーZ」がジャンプに加えて「テレビマガジン」でも連載が開始された(その為、ジャンプの連載は打ち切られる事になる)事実からもわかるように低年齢層向けである。結果、本作品は両要素が食い合ってどちらの層にも受け入れられない作品となってしまった

 と言うか、ぶっちゃけ本作品には根本的にもっと大きな問題点があったりする。それは、本作品の構成が前作の「サスケ忍伝」とほぼ同じで、そこにロボット要素を乗っけただけのように感じられる事だ

 具体例を幾つか挙げてみると、世界を統べる事が出来るほどの強大な力を持ったものが「サスケ忍伝」では妖刀十六夜で、本作品ではバリオンシステム及び魔神竜バリオンであり、それを手に入れようとする悪の組織が獣魔忍群にハロウィーン、そして組織の幹部で主人公のライバルとなるキャラが獣王院影丸にゼピュロスといった感じである。その上登場するキャラ達も主人公のサスケと竜樹、前述の影丸とゼピュロスなど、同じ役割のキャラは性格も似たり寄ったりだ

 まあ、それは作者が同じ故に仕方がない部分もあるし、そもそも両作品に限らずヒーローものによくある王道的な設定だとも言える。ジャンプの人気漫画の多くも基本設定はベタだし。それだけ世の中に溢れている王道であるから、ヒットを飛ばすには他を圧倒するパワーか他と比べて明確な差異が必要であるのだが、本作品は「サスケ忍伝」ともそこまでの差異が見られないし、パワーがあるのなら「サスケ忍伝」の時点でヒットしている訳で

 結局本作品は前作の「サスケ忍伝」の全10話に対して、ロボット要素を乗っけた分1話だけ多い、という訳ではないが全11話であえなく連載終了となってしまう。設定だけでなく、掲載順の動きといい、単行本が全1巻で完結したところといい、何から何まで似た者同士の両者であった