黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

追悼さいとう・たかを ジャンプにも存在したゴルゴ13フォロワー

 本日9月29日、さいとう・たかをが24日に死去していたという報が入ってきた。その代表作である「ゴルゴ13」は誰もが知る作品であり、今年7月には単行本の201巻が発売され、「こち亀」の記録を抜いてギネス世界記録を更新したばかりであった

 そこで当ブログでも同氏を追悼していきたいと思う…のだが、あいにく同氏はジャンプに連載どころか読切作品の1つすら掲載歴が無い(急いで調べたので間違っているかもしれない)。西村繁男の「さらば、わが青春の『少年ジャンプ』」によると、ジャンプ創刊時の連載陣の候補にはなっていたみたいではあるが

 

shadowofjump.hatenablog.com

 

 なので、代わりに「ゴルゴ13」の影響が色濃く感じられるこちらの作品を紹介したい

 

 マッド・ドッグ(83年22号~31号)

 武論尊・鷹沢圭

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 原作を担当する武論尊は後にジャンプの大看板となる「北斗の拳」の原作も務める事となる言わずも知れた存在であり、この当時既に「ドーベルマン刑事」という大ヒット作を生んでいてその地位を確立していた

 一方、作画を担当する鷹沢圭は77年に平松梅造名義の「汚された金庫」で手塚賞佳作受賞、翌78年には「イダテン・ホーク」で準入選、同作品が増刊に掲載されてデビュー。更に「イダテン・ホーク2」、82年フレッシュジャンプに「破壊都市TOKYOゼロ」と掲載を重ね、83年22号から鷹沢圭とペンネームを変えて本誌初登場にして連載デビュー作となる本作品を開始したのであった

 そんな本作品は主人公の渡瀬剛が、死んでしまった戦友の妹に仕送りする為、傭兵として世界を渡り歩き、任務を遂行するミリタリーアクションである

 武論尊は元々自衛隊に在籍した経験があって(因みに本宮ひろ志自衛隊時代の同僚である)ミリタリーに関して造詣が深い上、本作品の連載にあたってベトナムカンボジアに取材に行ったという事もあり、戦闘シーンはよくある戦争もののように感情で動いてやたら銃を撃ちまくるような真似はせず、冷静に状況を見極め、確実に任務を遂行する。この辺りが「ゴルゴ13」の影響が色濃いという所以である

 とはいえ、本作品が掲載されるのは青年誌のビッグコミックではなく少年誌であるジャンプなので「ゴルゴ13」のように女を抱く訳にはいかないし、なによりそのまんまではストイック過ぎる。なので、主人公の渡瀬はデューク東郷のように冷徹過ぎず、適度に少年誌的な味付けがされている。「利き腕を相手に預ける事はしない」などとは言わずちゃんと握手もしてくれるし、何よりも情に厚い。特に女性に対しては。標的の娘が巻き込まれる事を気にして暗殺に失敗する事もあるし、何より傭兵をしている理由からして同僚の妹の為である。そういえば、任務の性質の割には女性が出てくる頻度が高めだが、それも「ゴルゴ13」を意識したのだろうか

 だが、それでも少年誌ではストイック過ぎたのか、本作品は10話で連載が終了してしまう。同じく武論尊が原作を務める「北斗の拳」の連載が開始される僅か数カ月前の事であった

 その一方で、作画の鷹沢圭の名は本作品を最後にジャンプで二度と目にする事は無かった。その後別の名を引っ提げてジャンプに帰ってくる事になるのだが、それはまた別の機会に触れたい

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 ところで、「ゴルゴ13」はさいとう・たかをの死後も連載は継続すると発表された。ファンにとっては朗報だろうし、それを殊更批判するつもりもないが、どうもイマイチ割り切れない思いがするのは私だけであろうか