黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

元祖?モンスターハンター

 世間には今日という日を指折り数えて待っていたという人も多いのではなかろうか。と言うのも、本日3月26日は大人気ゲーム「モンスターハンター」のシリーズ最新作「モンスターハンターRISE」の発売日だからである。かく言う私も年甲斐もなく買ってしまったのだが、加齢で反射神経が衰えているのに大丈夫なのかとプレイ前から心配だったりする

 いきなりこんな話題をされても「モンスターハンター」なんて第1作が発売された時期からしてジャンプの黄金期がとっくに終わった後だし、そもそも漫画じゃなくゲームなんだからVジャンプならともかくジャンプと関係ないだろうと言いたい人もいるかもしれない

 だが、今回紹介するコレを見てもそんな事を言えるだろうか

 

 モンスターハンター

 平松伸二・飯塚幸弘

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ちゃんとゲームの方も購入しているのでご安心?を

 御覧の通り、ジャンプにも「モンスターハンター」はあったのだ。しかも、ゲームの「モンスターハンター」(区別の為、以降ゲームの方は「モンハン」と表記する)の第1作が発売されるより十何年も前に

 だが、その割に本作品の事を知る人は少ないのではないだろうか、と言うより、知っている人は果たしているのだろうか。元々当ブログの性質上、紹介する作品はあまり知名度が無いものが多いのだが、本作品は今まで紹介した中でも一番知名度が無いと思われる。なにしろ本作品は増刊に2回、本誌に1回読切が掲載されただけで、短期終了どころか連載にすら至らなかった作品だからである

 

 本作品の作画を担当する平松伸二は71年50号に掲載された読切作品の「勝負」でデビュー。当時まだ高校1年生という早熟ぶりであった。高校在学中に何本か読切作品が掲載されると卒業と共に岡山から上京して中島徳博のアシスタントを経験した後、75年36号から武論尊が原作を担当する「ドーベルマン刑事」で連載デビューを飾るといきなり連載期間が四年を超える大ヒットとなる。「ドーベルマン刑事」終了後は原作者をつけるのをやめて80年1号から「リッキー台風」の連載を開始。翌年「リッキー台風」が終了してから僅か数カ月後には「ブラックエンジェルズ」の連載を開始するとこれまた大ヒットを記録し、ジャンプにおけるバイオレンス漫画の第一人者としての地位を確立する。当時、私の周りでは細長い棒を自転車のスポークに見立てて雪藤の真似をする友人がいたが、こういう光景は全国で見られたことだろう

 が、ジャンプが黄金期を迎えると徐々にバイオレンス漫画は居場所を失っていき、その後に連載した「ラブ&ファイヤー」、「キララ」と続けて短期終了の憂き目にあってしまう。そして捲土重来を期して久しぶりに原作者を迎えて本作品をまずは87年の増刊サマースペシャルに、同年ウインタースペシャルにも掲載、88年には連載化の可否を探る為に本誌30号に掲載されたのであった

 一方原作を担当する飯塚幸弘は、本作品の他にもう1本原作を担当した以外の詳細は不明である。未確認情報としてはツイッターアカウントは発見したが、ツイートは存在しないので本人かどうか判別は不能で、自己紹介の欄には少年ジャンプ原作者という肩書と共に総合武道会館志光流拳法会長という肩書が見られる。どうやら道着を着用した総合格闘技らしいのだがこちらも詳細は不明だ。いやはや調査不足で申し訳ない

 そんな本作品は、インドの短剣カタールの二刀流、つまり双剣使いで生まれながらにして体に108の傷を持つ男であるシバァがモンスターを狩って狩って狩りまくるという「モンハン」の元となった作品である…というのは勿論嘘だ。「モンハン」の元となったという以外の説明は一応嘘じゃないけど

 実際のところ本作品と「モンハン」の共通点など殆ど見られない。作品によって多少の差はあれど、あまり文化の進んでいないファンタジー世界を舞台とする「モンハン」に対し、本作品の舞台は現代日本だし、「モンハン」では狩るべき標的が人間よりも巨大で姿形も人からかけ離れているのに対し、本作品の標的のサイズは人間と大差なく、姿形も二足歩行でかなり人間に近い

 そんな相手に対して肉が裂け、血が飛び散るいつものバイオレンスな平松節が炸裂するのだから、最早「北斗の拳」すら終了に向かい、健全化が進んでいたジャンプには受け容れられないのも無理はない。一応増刊に掲載された時に比べると本誌で掲載された時はシバァが優男風になっていたりと読者受けは意識したのだろうが連載を勝ち取るには至らなかった。そして本作品を最後に平松伸二はジャンプから姿を消したのであった

 

 尚、本作品の単行本には「モモタロー87」という読切作品も収録されているが、こちらも昔話の桃太郎とはタイトル以外の共通点は殆どないぞ