黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

JCであってJCでない

 ジャンプスーパーコミックスをご存じだろうか?

 かつて刊行していた姉妹誌であるスーパージャンプのコミックレーベルではない。通常のジャンプコミックスと同じくジャンプや月刊ジャンプに連載された作品等を発行するコミックレーベルである。にもかかわらず知らない人が多いと思われるのには理由があるのだが、それについては後で述べさせて貰う

 実のところ当ブログでも何度かジャンプスーパーコミックスレーベルの作品を紹介した事が何度かあったりする。前回紹介した「うわさのBOY」もそうだし、あの成合雄彦の「カメレオンジェイル」もだ

 

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今までここで紹介した中ではこの4作品がジャンプスーパーコミックスである

 そもそも判型から違うヤングジャンプコミックスやビジネスジャンプはすぐに見分けがつくが、ジャンプスーパーコミックスは判型が同じ上、表紙の上の方に4本ラインが入っている等デザインも共通しているのでパッと見ただけでは判別出来ないかもしれない。しかしよく見ると色々違いもある

 まず通常のジャンプコミックスは4本ラインの上にJUMP COMICSという文字とお馴染みの海賊マークが描かれているが、ジャンプスーパーコミックスはJUMP SUPER COMICSという文字と共に見慣れぬマークが描かれている。このマーライオンみたいなマークは一体何なのか調べてみたのだが結局分からずじまいであった。力不足で申し訳ない

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4本ラインもいつの間にか無くなってしまったよね



 裏表紙になると違いはより目立つだろう。ジャンプコミックスは中央にJCという青いロゴマークが入っているのに対してジャンプスーパーコミックスはJとCの間に赤いSが絡みついているようなマークとなっている

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細かく言うと右の色付き部分の幅も異なる

 

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勿論背表紙のマークも違うので、本屋で見掛けて気になった人もいるのでは

 そして一番注目すべきはここである

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 そう、ジャンプコミックスは当然ながら集英社が発行しているのに対し、ジャンプスーパーコミックスは集英社ではなく創美社という別の会社が発行しているのだ

 と言っても発売は集英社だし、創美社は後に集英社クリエイティブと社名を変更した事からもわかるように集英社のグループ企業の1つであるから実質的には変わらないのだが

 実質的にジャンプコミックスと変わらないのにわざわざ別レーベルが存在するのには理由がある。ジャンプ創刊当時の集英社は連載作品の全てを単行本化出来るほどの予算が無く、採算の取れなさそうな作品は単行本化しない方針でいたのだが、ジャンプが天下を取った事により余裕が生まれ、今後は連載作品は全て単行本化するという方針に変わり、76年に採算がとれなそうな作品やこれまで単行本化されなかった作品、そして短編集等を単行本化するべく誕生したのがジャンプスーパーコミックスだという。ジャンプの連載作品を出版するレーベルにも関わらず知名度が低いのはその為である

 漫画家は原稿料だけでは経費を引くとそれ程儲けにならず、単行本の印税収入が大きいという話を聞く。そういう点においては全ての連載作品が単行本化されるという事は漫画家にとって実に結構な話である。ただ、レーベル第1号の単行本が当時ジャンプで絶大な影響力を持っていた本宮ひろ志の「ゼロの白鷹」で、程なくして本宮の連載作品で単行本化されていなかった「武蔵」も単行本化されたあたりに大人の都合を感じたりもするのだが

 

 それにしても、自分の作品がジャンプスーパーコミックスで出版されると知った作者の胸のうちはどうだったのだろう。言わば「お前の作品は売れない」と宣告されているようなものなのであり、落ち込んでしまうものなのか、それでも単行本を出して貰えるだけ幸せと思うものなのであろうか

 ともあれ、わざわざ新しく起ち上げたにもかかわらずジャンプスーパーコミックスレーベルで出版される作品は少なかった。元々単行本化しない程の作品は稀であり、過去の単行本化してない作品の発行が済むと、現行の作品は別にレーベル分けせずにジャンプコミックスで発行しても変わらないわけで、90年代半ばにはジャンプコミックスに吸収されたように出版が止まり、以降は漫画ではない書籍が数冊出ただけの休眠状態となってしまう

 レーベルの実質的な存続期間は約十七年、その間に200超の単行本を発行してジャンプスーパーコミックスは闇に消えて行ったのであった