黄金期ジャンプの影

主にジャンプ黄金期の短期終了作品について語ります

黄金期ジャンプ唯一のジャンル作品

 現代日本において漫画が好き、若しくは好きだったという人はかなりの数になると思われる。だが、そんな人でも全ての漫画が好きという人は少数で、大概はジャンルで好き嫌いが分かれるのではないだろうか

 かく言う私にも当然好みのジャンルというものはある。まず1つはスポーツ漫画、そしてもう1つは四コマ漫画

 好みが完全にオヤジ化してるじゃないか、と笑うなかれ。私はオヤジになってから四コマ漫画が好きになったのではない。物心がついた頃には誰が買った物かはわからないが家にいしいひさいち長谷川町子の単行本があったせいか、私は幼い頃から四コマ漫画が好きであり、初めて買った四コマ漫画の単行本はジャンプを購読するより前だったのだから筋金入りと言えよう

 しかしながらこの四コマ漫画というジャンルはジャンプには非常に縁が薄いジャンルで、黄金期においては連載漫画のショートエピソードとしてとか、年末年始の特別企画くらいしか見る機会がなかったものだ

 …1本を除いては

 そんな訳で今回紹介するのは黄金期ジャンプ唯一の連載四コマ漫画であるコレだ

 

 おとぼけ茄子先生(87年44号~88年14号)

 高橋ゆたか

 

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  作者の高橋ゆたかは後にボンボン坂高校演劇部が割とヒットして単行本が全12巻になる程連載が続いたのでご存じの人も少なくないと思うが、元々は四コマ漫画を描いており、ジャンプ初登場を飾ったのは87年24号の茄子くんという読切の四コマ漫画だった

 そしてその茄子くんの主人公を子供から大人に設定を変更して同年44号から開始したのが作者の連載デビュー作となるおとぼけ茄子先生である

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どの出版社も四コマ漫画の単行本となるとサイズがデカめになるなのはなんでだろう

 さて、四コマ漫画の説明をするのもどうかと思うけど本作品がどんな話かというと、茄子に似た顔をした中学教師の茄子太草が同僚や教え子を巻き込んで騒動を巻き起こすといったものだ

 ネタの傾向としてはダジャレからシュール、オヤジ的なエロ方面と子供的なうんこちんこ方面の両方の下ネタ、中には教師という設定を無視してレーサーになったり昔ばなし風になったりと良い言い方をすればバラエティ豊か、悪い言い方をすると統一感がないという感じを受ける。その為、全部のネタを面白いと感じる人は少ないと思うが、どんな人でも1つくらいは気に入るネタが見つかると思う。いや、今となってはネタが古く感じるから見つからないかも

 そして登場キャラは気難しい人参教頭や悪戯好きのバナナくんなど野菜や果物から名前をとっており、茄子先生のように顔が名前に寄せてあるキャラと普通のキャラが混在してこちらも統一感はないが、普通の女性キャラが可愛いのは美点だ。ボンボン坂高校演劇部もギャグマンガの割には(失礼)女性キャラの可愛さに定評があったが、その片鱗はこの当時からあったのだ

 

 更に本作品には注目すべき所が1つある。それは、キン肉マンのオリジナル超人募集のように読者からネタを募集し、採用されたネタは作者が四コマ漫画に仕立てて本誌で発表する「おとぼけ四コマ」というコーナーだ。当時はジャンプ放送局といい、ジャンプ全体で投稿が盛り上がっており、読者の熱量の高さというものがうかがえる。私は現在はジャンプを読んでないので知らないのだが、こういった募集ってまだあるのだろうか

 このコーナーで採用されたネタは単行本では巻末に一斉掲載されており、作者が考えたネタと遜色のない出来である。まあ、ネタを選んだのも漫画に仕立てたのも作者本人なのだから当たり前なのかもしれないが

 因みに採用者は名前(ペンネーム)の他に年齢も載せられるのだが、四コマ漫画のネタなんか投稿するようなヤツは年齢層が高めだろうと思いきや意外や意外、採用者の大半は中学生で最年少だと10歳と、若い頃から四コマ漫画が好きな人間は自分だけではないと嬉しい気分になる

 

 しかし、ジャンプ読者全体からすると四コマ漫画が好きな人間はそう多くなかったようで、本作品が二十一週で終了してしまうと黄金期のジャンプに四コマ漫画が連載される事はなくなってしまった(それ以降については知らないが)

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四コマ漫画ゆえか連載開始時すら巻頭を飾れなかった

 そして作者もまた四コマ漫画を描くのを止め、後にボンボン坂高校演劇部をヒットさせる事になるのは既に述べたとおりだが、本作品が好きな私にとってはそのヒットが嬉しい反面、四コマ漫画を描かなくなった事に一抹の寂しさを感じたのであった